はじめに

「営業スタイル」にはどんなものがある?

では実際、営業にはどんなスタイルがあるのでしょうか。まず整理しておきましょう。

→1: 説明系
商談の8割前後を営業する側が話している営業。製品をわかりやすく説明しようとしたり、顧客の興味関心を引き出そうとして、いろいろ話すうちに、ついつい自分ばかりが話す営業になってしまいます。1年目、2年目だけでなく、営業パーソンの中では最も多いタイプになります。しかしながら、顧客がその製品やサービスについて知りたいという場合には、成果も出ます。

→2:聞き上手系(寄り添う系)   
商談の半分以上を顧客の側が話している営業。厳密には、営業が相手が話しやすい質問をしたり、現状の課題を相談したくなるような情報提供の前振りをしたり、導入事例などを共有し、営業を展開しています。

→3:連絡係系
顧客のニーズや期待を正確に、額面通りに自社の技術部門やクリエイティブ部門といった関連部門に伝え、両者の意向を調整しながら、うまく案件をハンドリングしていく営業。フットワークの良さ、先を読む力、周りを動かすことが求められます。

→4:御用聞き系
既存の取引先に営業するアカウント営業に多いスタイルで、「何かありませんか?」という注文取りが源流。ここのところ「御用聞き営業」が否定される向きがありますが、新規開拓営業出身者からすると、訪問することを許されている顧客があること自体、身内として扱われること自体が羨望に値します。その「強み」に気づいたうえでの営業の進化が望まれます。

→5:提案系(コンサル系)
そもそも広告代理店、プランニング会社、制作会社、コンサルティング会社といった業種のコア商材自体が「提案」なので、当然、営業もそうしたスタイルになります。また、それ以外の業種でも、顧客のお困りごとや課題の問題解決策を提案する場合は提案系の営業スタイルとなっています。その一方で、「提案営業」といいながら、顧客にとっては自社の問題解決にはつながらない、単なる「製品の提案」を一方的に「提案営業」と呼んでいる「なんちゃって提案営業」も多いので、ここは区別しておきたいところです。

→6:共創系
これは、前の「提案系」が一段階進化したかたちですが、特にIT業界を中心に広まっています。その背景にあるのは、すべての製品、サービスが行き渡ったなかでの、DX(デジタルトランスフォーメーション)、AI(人工知能)といった新しい概念の登場です。技術の進歩が速く、企業としても何を提案して欲しいかがわからなくなり、ならば、一緒にビジネスやサービスを創り出しましょう、ということで始まった流れになります。ここで求められるのは、斬新な発想、「切り口」を生み出す想像力といったコンセプチャル系スキルになります。逆にいえば、そうしたアイデアで勝負したい営業パーソンには“打ってつけ”といえるでしょう。

→7:技術知識系
IT業界や製造業には、技術者出身の営業パーソンが少なくありませんが、顧客からすると技術知識に富む営業は心強いですし、図面が書けたり、簡単な設計変更を営業が対応できたりすると顧客からも社内でも重宝がられる存在となり得ます。これからも、どんどん増えていって欲しいと思います。

→8:受動系(受け身系)
顧客からの見積依頼、提案依頼(RFP=Request for Proposal)からスタートする営業。メーカー、ゼネコン、サブコン、設備系、IT業界などに多く、営業の仕事が、その見積対応という企業さえあります。

→9:能動系
受動系の真逆で、自ら仕掛けて、見込み客をターゲティングし、アプローチし、案件化させて、刈り取る能動系の営業になります。昭和、平成初期の日本の成長期に全盛を誇りましたが、現在でも新規開拓営業ではこのスタイルが主流となっています。

→10:キャラ系(なぜか顧客に愛される)系
技術知識に優れるとか、モチベーションや意識が高いということはないのに、なぜか顧客に愛される、好かれる営業パーソンが存在しています。人間的に「おもしろい」場合が多いのですが、お客様から「ちゃん付け」で呼ばれたり、あだ名で呼ばれたりするこのキャラ系は強力な武器で、競合企業からすると、非常にイヤな存在となります。

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