はじめに

判断能力が低下したら口座はどうなる?

銀行預金は預金者本人の資産であり、預金を下ろすには本人の意思確認が必要です。したがって、親族といえども勝手に引き出すことはできません。では、もし認知症などで本人の判断能力が低下し、意思確認ができなくなった場合はどうなるのでしょうか。

銀行がその事実を知れば、預金者本人の預金取引に制限をかける場合があります。それ以後の預金の引き出しや定期預金の解約、銀行振り込みなどの手続きは、親族であっても基本的にはできなくなります。銀行は、トラブルを避けるために「成年後見制度」の利用を求めてきます。実際に成年後見制度の利用動機としては、毎年「預貯金等の管理・解約」が1位となっています。

進んでいない成年後見制度の利用

しかし、判断能力が低下した預金者に成年後見人等が付くと、それ以降の預金の管理を成年後見人等が、その預金者が亡くなるまで続けることになります。加えて、成年後見人等に専門家が選任された場合には、その専門家への報酬もかかることから、この利用について親族の理解が得られないケースが多いようです。実際、判断能力が不十分の人が全国で1,000万人いると言われるなかで、令和2年12月末現在における成年後見制度の利用者数はおよそ23万人にとどまっています。実に判断能力が不十分な人の2%程度しかその利用が進んでいないことになります。

一方で、本人の医療費、施設入居費、生活費などの支払いに充てるため、親族から預金の払い出しを求められるケースも多いようです。将来的に認知症患者の金融資産は200兆円を超えるといわれており、これを放置するわけにもいきません。判断能力が低下した預金者の預金の取り扱いについて、銀行はその対応を迫られていました。

新たな指針で対応が変わる?

そこで、2020年(令和3年)2月に全国銀行協会から判断能力が低下した預金者への対応指針が発表されました。そこには、成年後見制度を利用していない場合でも、親族が本人に代わって預金を引き出すことができるケースが例示されていました。具体的には、判断能力がなくなる前であれば本人が支払っていたであろう本人の医療費などの支払いなどで、本人の利益になることが明らかである場合に限り払い出しに応じるとされていました。

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