はじめに

気候変動以外の4つの環境目的

報告書では、「水・海洋資源」、「循環型経済」、「汚染防止」、「生物多様性」の4つの環境目的に「実質的に貢献」する活動の基準を整理するにあたって、まずヘッドライン野心水準(以下、HAL)が定義されました。

HALとは、各環境目的とリンクする意欲的な目標水準のことです。気候変動の分野では、パリ協定を背景としたEUの温室効果ガス排出削減目標(2030年までに1990年比で55%以上削減・2050年までに脱炭素化)がHALにあたります。

4つの環境目的のうちの「水・海洋資源」では、「2027年までに、全ての水域で少なくとも『良好な状態』を実現する」こと等がHALとして掲げられました。なお、この「良好な状態」とはEUの水枠組み指令で定義された水質の状態で、同様にその他の環境目的においてもEUの各環境政策等と対応するHALが掲げられました。

このHALを踏まえ、PSFは各環境目的において優先してタクソノミーを策定すべき14の対象セクターと103の経済活動を特定し、各経済活動の「実質的な貢献」の基準等の原案を示しました。

今後についてですが、原案の発表と同時に実施した意見公募の結果を踏まえ、11月にPSFが最終報告書を欧州委員会へ提出する見通しです。その後、来年の上半期中に欧州委員会が4つの環境目的の詳細な基準を定めた委任法の採択を行うとみられます。

社会版のタクソノミーも検討

EUタクソノミーは環境課題に焦点を当てた「グリーンタクソノミー」ですが、欧州委員会はタクソノミーを社会課題の領域に広げることも検討しています。7月に、PSFは社会版のタクソノミーである「ソーシャルタクソノミー」の原案を公表しました。

原案において、ソーシャルタクソノミーにおける企業の社会目的への貢献には2つの側面があると整理されました。一つは「垂直的側面」といい、企業が自社の製品やサービスを通じて社会にもたらすことができる貢献です。この側面の社会目的として、人間にとって不可欠な製品・サービス(水・住宅・教育等)や基本的な経済インフラ(インターネット等)へのアクセス向上を通じた、十分な生活水準の保持への貢献が示されました。

もう一つが、「水平的側面」です。企業の事業活動のプロセス内での社会への貢献を指すもので、原案ではディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の確保(強制労働の禁止等)、消費者の利益の保護(個人データの保護等)、包摂的且つ持続可能なコミュニティの実現といった社会目的が提示されました。

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