はじめに

注目は11月のOPECプラス会合

現時点でそれに対する明確な答えは見出せないものの、一つのきっかけとなり得るのは、OPEC産油国による増産ペースの加速であると指摘できます。10月のOPECプラスの会合では、計画に見合ったかたちでの減産規模縮小(増産)の決定にとどまりました。

11月の同会合で計画以上の増産姿勢が示されれば、原油市場には需給ひっ迫の緩和というメッセージとして伝わると見られます。短期的にはこれが原油価格高騰をクールダウンさせる、もっとも効果的な方法といえるかもしれません。

シェール革命の米国では原油生産の回復に遅れ

もう一つの選択肢としては、米国での原油生産の回復が挙げられます。コロナショック後の米国では、原油の生産量が大幅に縮小し、未だにコロナ前の正常な状態を取り戻していません。

米国での原油生産がままならないのは、石油会社による開発費削減という側面が大きいのは事実ですが、それとともにサプライチェーンの混乱による部分も大きいと推察されます。具体的には、上流開発の現場で従事する労働力の絶対的な不足です。

米国ではワクチン未接種が労働市場のボトルネックに?

今の米国は企業の求人数が過去最高レベルに達しながらも、それが必ずしも雇用の拡大につながっていません。新型コロナの感染への不安から、職場復帰を果たせないケースもあると言われますが、それ以外の要因で足かせとなっているのが、企業が従業員に求めるワクチン接種です。

米国ではワクチン肯定派と否定派で、接種の取り組みが二分された状態にあり、国全体ではワクチンの接種比率が伸び悩んでいます。開発の現場に労働力が供給されないのは、そうした事情も大いに関係しているようです。

とはいえ、これまでバイデン政権の下で労働者(失業者)を保護してきたパンデミック対応の救済策(失業手当の上乗せ等)は、すでに期限切れとなっています。しばらくの間はこれまでの給付で食いつなげるかもしれませんが、いずれそうした蓄えも尽きるでしょう。

必要に迫られて職場復帰を目指す人は、ワクチン接種が条件となれば、消極的ながらも応じずにはいられないであろう。そうして、雇用のスラックが解消され、生産現場に労働力が戻れば、一定レベルで米国の原油生産量は回復に向かうと考えられます。

原油価格の高騰が、そう遠くない将来に沈静化してくれば、株式市場の不透明感を高めているインフレ懸念もある程度、落ち着いてくるのではないかと期待しています。

<文:チーフグローバルストラテジスト 壁谷洋和>

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