はじめに

本丸は“先物ETF”ではなく“現物ETF”

今回米国で初めて承認されたのはビットコインの先物ETFでしたが、本来期待されているのはビットコインの現物ETFです。これは現物ETFの場合にはビットコインの現物需給に影響が及びやすいためです。また、ビットコインと比較される金の価格が現物ETFの実現(2004年11月)をきっかけに高騰したためです。

米国証券取引委員会(SEC)はビットコインの現物ETFについて投資家保護が不十分であるとの理由から未だに慎重な姿勢を示しています。先物ETFの場合には商品先物規制によって市場を監視する仕組みがありますが、現物ETFの場合には価格操作や詐欺などを防ぐ仕組みが確立されていません。

しかし、米国では先物ETFの承認を受けて現物ETFの議論が前進することは間違いないでしょう。大手金融機関が暗号資産のカストディサービスを提供するような動きもあり、現物ETFにおける資産管理の部分については他のアセットクラスと同様の態勢が整備されつつあります。

先物ETFだけを見ても第一号が承認されてから新しい動きが出ています。ビットコインの先物価格に連動するシンプルなものだけではなく、レバレッジ型やショート型などの先物ETFが新たに申請されており、今後はビットコインの先物ETFの商品性が多様化していくことが予想されます。

SECはビットコインの先物ETFの運用状況を注視しながら現物ETFの可能性を見極めていくことでしょう。

日本ではいつ取引できるようになる?

最後に、日本におけるビットコインETFの動きについてです。日本では米国と違って暗号資産のカストディサービスを提供する業者もおらず、独自にビットコインETFが誕生することは今のところ考えづらい状況です。そのため、米国で承認されたビットコインETFが日本に上陸するかどうかが注目されます。

通常、日本の証券会社等が海外ETFを取り扱う際には金融庁の承認を受ける必要があります。先ほど触れた金の現物ETFについても日本で取引できるようになったのはおよそ4年後のことでした。そのため、米国で承認されたビットコインの先物ETFについてもおそらく数年単位のズレが日米で生じると考えられます。

しかし、米国におけるビットコインETFの進展を受けて、日本当局の暗号資産に対する姿勢に変化が生まれる可能性はゼロではありません。現行の規制では金融機関が暗号資産を預かることは禁止されています。しかし、それが見直されるなどの動きが出てくれば、日本の暗号資産市場でも明るい話題が増えてくるでしょう。

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