はじめに

「読解力」で問題の本筋をつかむ

K:あらためて、数学は「問題文を理解する読解力も大事」なように感じてきました。それとも読解力がいくらあっても、「前提」を知らなければ解けないのか、どっちなんですかね?

石原:「前提」を知ったうえでの「読解力」ですね。「前提」というのは、高校数学の常識みたいなものです。たとえば、方程式を解くときにxを左辺に持ってくるとかもそうです。さらに正確にいえば、「前提」を知って、「数学独特な言い回し」(※)がわかったうえで「読解力」がいります。

K:そういうことを知らなかったから、落ちこぼれたのかもしれません。

石原:教科書の言葉そのままだと、生徒によっては理解が難しいので、めちゃくちゃ意訳をして「こういう感じ」と伝えると、生徒も「うんうん、わかった」といってくれます。意訳は数学的に厳密性に欠ける部分はあるかもしれませんが、大意をつかんでくれたほうがいいと思って話しています。

K:では、数学が得意な子たちのクラスは、先生が説明しなくても自分でわかるんですか?

石原:成績が上位のクラスの生徒は、説明がなくてもわかるんじゃないかな、と私は思います。自分で問題を解きながら「前提」も見出せているからです。

K:そういう生徒は、新しい単元で先生が教えなくても「ここは、こういうことを聞かれるんだな」とつかめるんですか! それって「数学的センス」みたいなもの?

石原:「前提」が見出せる生徒は、教科書に書いてある定義の意味を理解して、それに対して誠実にやればいいということをつかみます。つまり、定義を用いて、立ち向かえばよいということを体得しているのです。だから、がんばろうと思えるのだと思います。しかし定義があやふやな生徒は、やり方を覚えて……という感じになっていて、理解はしていないけど、とりあえず答えを出せばいいという感じで取り組んでしまいます。

K:それって、暗にいっていることをつかむということですか? 暗黙の「前提」というのは、素人にやさしくないですよね。

石原:ある意味そうですね(苦笑)。

K:使う武器はみんな平等かもしれないけれど、一方では使い方をちゃんとわかっている人と、そうでない人がいるわけですね。たとえば剣道とかも、基本を習っている人と、とりあえず竹刀を振り回せばいいと考えてる人とでは全然ちがいますよね。

石原:たしかに数学が苦手で「前提」を知らない生徒は、どう使うのが有効なのかも知らずに、武器だけ渡されている状態に近いかもしれません。ですので、数学と向き合う前提の姿勢として、まずは「定義」や「用語」はしっかり覚えて、どんな問題でも本筋をおおまかに理解できるようにすることが大切です。

(※)「数学的な言い回し」
「展開せよ」「証明せよ」など、数学の問題文特有の表現や言い回しのこと。『そういうことだったのか!高校数学』第3章では、高校数学で出てくる言い回しについて一つひとつ解説していきます。


石原泉(いしはら・いずみ)
公文国際学園数学講師。Z会進学教室数学講師。1964年北海道生まれ。岐阜県公立中学校教諭を経て、難関大に強いZ会の東大・京大理系コースの添削者となる。Z会での15年間にわたる添削者としての経験で培った、生徒の立場になって問題を「翻訳」する正答へのアプローチ、より具体的な例を用いてかみ砕いた解説に定評がある(Z会における表彰実績もあり)。また、大学受験のバイブル「赤本」の執筆者として5年間携わる。自分の子どもたちにも独自の理論を教えた結果、高校数学を楽に乗り切ることに成功し、長男は2009年京都大学工学部、次男は2013年東北大学工学部に進学。学校、予備校、Z会の添削等で指導した生徒はのべ30000人を超え、旧帝大をはじめ国立大、医歯薬系大学にも多数合格実績を持つ。

そういうことだったのか! 高校数学 石原 泉 著

そういうことだったのか! 高校数学
中学までは数学が得意だったのに、高校で苦手になってしまったすべての人へ。メンタルブロックをはずすべく、つまずく原因を突きとめ、「数学の世界観」を理解し、「数学独特の言い回し」を翻訳して「問題の背景」がわかると、おのずと解き方も見えてくる。

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(この記事は日本実業出版社からの転載です)

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