はじめに

カギは「〇〇不足の解消」

特に業績の好不調が目立った銘柄をみていきましょう。まず、ソニーグループ(6758)の決算は圧巻の内容でした。中間決算として売上高は過去最高となり、通期の業績予想も上方修正しています。ゲーム、音楽、映画など幅広い分野で好調が続いており、世界的な半導体不足でプレイステーション5の十分な供給ができていないなか、供給が正常化すればさらなる業績の上積みも期待されます。株価は決算発表の翌日に2%近く上昇、翌々日も5%超の大幅高となりその後も堅調に推移しています。

三菱商事(8058)も非常に良い決算を発表しました。7~9月期の営業収益は前年同期比28.5%増の3兆9,330億円、経常利益は3倍近い2,515億円となりました。資源価格の高騰が追い風となり、好調な業績を達成しました。しかし三菱商事の株価は発表日(14時に発表)、翌日とも3%近く下落しました。好業績はある程度予想されていたことや株価が高値圏にあったことから利益確定売りに押されたようです。

日産自動車(7201)も期待を上回る好決算で株価が大きく上昇しています。7~9月期の売上高は1.1%増の1兆9,387億円とほぼ横ばいでしたが、経常利益は前年同期の4億円からなんと942億円と900億円以上の大幅増となりました。あわせて今期の業績予想を上方修正したことも好感されて、発表翌日の11月10日前場終了時点で前日比7%以上も株価が上昇しています。こちらも半導体不足の影響で販売台数は想定を下回ったものの、販売費用等をコントロールしながら増益につなげたようです。

一方、残念ながら決算が冴えなかった企業もあります。例えば、任天堂(7974)は減収・減益のさえない決算でした。7~9月期の売上高は26.7%減の3,016億円、経常利益は26.8%減の1,076億円となりました。昨年の同時期は新型コロナウイルスの影響により巣ごもり需要が特に増加した時期でしたので反動減は仕方ない面があるのと、こちらでも半導体不足の影響でゲーム機のSwitchの減産を行うと発表しました。

これまでお読みいただいた方はおわかりの通り、多くの企業に「半導体不足」という問題がのしかかっています。巣ごもり需要による需要の増加+新型コロナウイルスの影響で十分な供給体制を組むことができないというダブルパンチが発生し、私達の生活にも影響を与えています。

逆に言うと、「半導体不足」が解消してくれば企業決算に好影響を与えてくるとみられ、一段の業績改善も期待できるかもしれません。経済正常化の観点からも、新型コロナウイルスに対して効果の高い経口薬の一刻も早い登場が望まれそうです。

<文:マーケット・アナリスト 益嶋裕>

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