はじめに

物流業界では2024年に向けて、再度物流危機に直面しています。前回、物流危機が顕在化した2017年は、ECの成長に伴い急増する宅配貨物の配送網のひっ迫がきっかけであり、物流業界はこれを運賃値上げで乗り切りました。値上げによる収入を原資に、物流事業者はドライバーの労働環境を是正し、ドライバーの採用強化や離職防止策を打ち、何とか「運べない」状況を回避しました。

しかし、貨物量と輸送能力のいわば物流における「需給」はバランスしたとは言えず、また貨物量の局所的な増加による偏在で、輸送効率は悪化の傾向が続いていることから、今後改めて「運べない」事態が危惧されます。そこに、拍車をかけるとみられるのが「2024年問題」です。


物流業界が抱える「2024年問題」とは

2019年に施行された働き方改革関連法に基づき、罰則付きの時間外労働時間の上限規制が設けられることになります。2019年度からこの規制は適用されていましたが、自動車運転業務は長時間労働の実態があるため、猶予期間が定められていました。しかし、2024年4月1日からは法律が適用され、年960時間が時間外労働の上限となります。時間外労働の上限規制適用の猶予期間終了により、ドライバーの需給はさらにひっ迫することが想定されます。

鉄道貨物協会の試算では、2017年度は10.3万人のドライバーが不足していました。ドライバー供給量は少子高齢化に伴い減少する一方、宅配貨物量の増加を中心に輸送量総量は変わらないとすると、2025年度20.8万人、2028年度には27.8万人が不足すると予測しています。

この予測をもとに、供給量に対する需要量でドライバーの充足率を算出すると、2017年度は90.5%でした。その後、充足率は低下の一途をたどり、2025年度は81.9%、2028年度は76.3%にまで低下し、2017年度の3倍近い水準まで不足数が膨らむことになります。まさに、2017年の物流危機以上の深刻さで「運べない」事態が差し迫っているのです。

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