はじめに

FRBは信認を保てるのか?

現在、FRB以上に物価上昇を苦々しく思っているのがバイデン政権でしょう。近年あまり経験したことのない高いインフレ率が政権の支持率低下に直結しており、すでに看過できない問題となっています。ちなみに、米国の10月消費者物価指数(CPI)は前年同月比+6.2%と31年ぶりに6%を超えました。

来年秋に中間選挙を控える中、インフレは野党共和党による格好の政権攻撃材料となっており、物価の安定は急務と言えます。FRBは、来年以降もしばらく物価高止まりが続くことを示唆しているものの、消費者、企業さらにはバイデン政権の忍耐がどこまで持つでしょうか。物価上昇に手をこまねいて傍観することは許されない雰囲気が徐々に醸し出されるとみられます。

勿論、早期の利上げは、「インフレは一時的」というFRBの見解が誤っていたことを認めることになるため、簡単ではないのかもしれません。とは言え、金融政策にメンツは関係ありません。FRBが信認を保てるか、正念場に差し掛かっていると思われます。仮にFRBが利上げに踏み出せば、世界の中央銀行が雪崩を打って追随することになりそうです。

日銀は当面、円安を容認する見込み

一方、日本に目を向けると、決して物価上昇とは無縁ということではないでしょう。現在、携帯電話通信料の引き下げによってインフレ率が低位に抑えられていますが、来年4月以降はこうした効果が一巡することになります。

もっとも、日本ではまだデフレマインドが払拭されておらず、他国に比べると企業による価格転嫁力は弱いと言えます。日本銀行が目指す2%の物価安定目標の達成はなおも不透明で、異次元の金融緩和政策の出口は見えません。

来年以降、為替市場で円一人負けの構図が鮮明になっても不思議ではないでしょう。ドル円はひとまず節目の115円が通過点になると予想されます。

なお、円の実質実効為替レートを見ると、すでに日銀の黒田総裁が円安進行を牽制したとされる水準に接近しています(ちなみに、当時のドル円相場は125円台)。しかしながら、ここもと黒田総裁のスタンスは明確な円安容認です。海外とは違い、物価上昇の芽を大事にしたいという思いが窺えます。少なくとも、日本サイドから安易に円安基調に水を差すことはないと思われます。

<文:シニア為替ストラテジスト  石月幸雄>

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