はじめに

気候変動対応を軽視すれば移行リスクを高めることに

もっとも、これらのコミットメントで示された基準が国際的にデファクトスタンダード化したわけではありません。どちらのコミットメントも、多くの主要な関係国が賛同・署名を見送っているほか、ゼロエミ車に関する宣言には法的拘束力がないことが明示されており、実効性は不透明です。

また、冒頭に紹介した「グラスゴー気候合意」についても、採択直前に「石炭火力発電の『段階的"廃止"』に向けた努力を加速していく」という表現が、インド等の反発を受けて『段階的"削減"』という弱い表現に修正されました。こうしたことから、COP26は失敗に終わったとみなす意見も多く見受けられます。

では、COP26は本当に失敗に終わったのでしょうか。筆者はCOP26の成否は今後の各主体の取り組みにかかっており、現時点で適正な評価を下すことは困難であると考えています。しかしながら、一つだけ確かなことは、気候変動に関する科学的知見の蓄積や気候変動への人々の問題意識の高まりなどを背景に、COP26までの数年間で各国の気候変動対応は急速に進展してきたということです。

COP26に併せてインドをはじめとする多くの国々が新たにネットゼロ目標を発表しましたが、数年前には途上国も含むこれほど多くの国々が、ネットゼロに向けて足並みを揃えるということ自体が想像もつかないことでした。

こうした中で、現在合意されている基準が先々も適用されることを各国政府や企業が漫然と認識しているだけでは、将来ゲームチェンジが起きた時の対応の遅れを招き、甚大な移行リスクが顕在化する可能性があります。

<文:エコノミスト 枝村嘉仁>

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