はじめに

ソフトフォークとハードフォークがおこなわれる理由

ここまでハードフォークとソフトフォークの違いについて述べてきましたが、暗号資産にとってブロックチェーンが分岐することは基本的に望ましくありません。そのため、大多数のマイナーや開発者らが賛成しない限り、どちらも安易に実施されることはありません。しかし、それでもハードフォークやソフトフォークが定期的におこなわれるのはなぜなのでしょうか。

暗号資産の取引の利便性は基盤となるブロックチェーンに依存します。ブロックチェーンの取引処理性能を上まわる取引が発生すると取引の遅延や手数料の高騰などが起こります。この問題を「スケーラビリティ問題」と呼びます。また、暗号資産では取引のプライバシーも重視されます。一般にソフトフォークやハードフォークはこれらを改善するためにおこなわれます。

しかし、暗号資産ではアップデートの方針を巡ってコミュニティ内で対立が起こってしまうケースがあります。その場合にはハードフォークによってブロックチェーンが分岐し、これまでの暗号資産とは別に新しい暗号資産が誕生します。このとき旧暗号資産の保有者に対して同量分の新暗号資産を付与することでユーザーを引き継ぐことが多くなっています。ビットコインキャッシュが誕生したときもビットコインの保有者に対してそれが無償で付与されました。

2017年の頃にはハードフォークによって新しい暗号資産が次々に誕生し、一部では無償の付与をねらって投機的な動きも見られました。そのため今でもハードフォークを好材料として捉える人はいます。イーサリアムのようにコミュニティ内の賛成を前提としたアップデートであれば価格の上昇も期待できますが、なかには中身のないものや対立によって生じるものもあるため、その背景を慎重に見極めなければなりません。

今回のビットコインのソフトフォーク「タップルート」は90%以上のマイナーが支持したうえで実施されました。スケーラビリティやプライバシーの向上とともにビットコインのユースケースが拡大していけば価格にもポジティブな影響が及ぶこともあるかもしれません。

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