はじめに
気づかなかった理由は戸籍の編成や改製が行われたため
気づかなかった理由として、戸籍の編成・改製等が挙げられます。
戸籍の「編製」は、婚姻等で親の戸籍から出て新たに筆頭者として戸籍を作ること。戸籍の「改製」は、法改正によって新しい様式になり改製前の戸籍は閉鎖され新しく作り直されることです。
これまで、戦前戦後合わせて6回、戸籍の改製が行われています。私たちが見ることができる戸籍の種類は年代別に5種類あり、出生から属していた戸籍をたどると数回改製されていることが確認できます。
改製等で戸籍が新しく作成されたとき、戸籍の内容が全て引き継がれて記載されるわけではありません。戸籍法において、改製後も記載するとされる項目の中に、「認知をした事実」は含まれていません。そのため、改製後の戸籍には認知の記載がなくなるのです。
他にも、千里さんのように婚姻して親の戸籍から出て夫の戸籍に入ると、親の戸籍の千里さんの欄は「除籍」となり、その後改製が行われた場合、改製後の親の戸籍には千里さんの記載はなくなります。除籍された者も改製後に引き続き記載する事項ではないためです。
戸籍に記載がなくても親子関係は変わらない
編製・改製後の戸籍に記載がなくなったからといって、千里さんが子どもでなくなったということではありません。認知も同じことが言えます。そのため、相続人の確認をするために、亡くなった方の出生から現在までの戸籍をすべて取得し、編製・改製後の戸籍に引き継がれなかった事項も確認していく必要があるのです。
千里さんが過去に戸籍謄本を取得して父親の欄を見たときに認知の記載がなかったのは、はまさにこのためです。
千里さんの父親が認知していた時期は婚姻の2年前、その後婚姻して新戸籍を編製しているので、婚姻後は認知の記載がされておらず現在まで気づかなかったということになるのです。
ちなみに、認知した親の戸籍は編製・改製で記載が引き継がれませんが、認知された子の戸籍には、引き続き認知した親の記載が残ります。