はじめに

自己肯定感と自律神経の密接な関係

――「あの人なら」と考えることにより、逆に自分のふがいなさを実感してしまいそうです。同期入社の友だちと比べると、先輩から指示されたり、上司から意見をいわれたりすることが多くて……。自分は劣っているんだろうなと思って落ち込むことがあります。

(小林)自律神経というのはとても繊細なもので、他人と自分を比べて劣等感を持ってしまうだけでもすぐに乱れてしまいます。自分の自律神経とはゲーム感覚でおもしろがって付き合うことが大切ですよ。

――悩んでいるときにゲーム感覚でおもしろく付き合うなんて、どうすればいいんですか?

(小林)たとえば、人から指示されたり意見をいわれたりしたことが「嫌だな」「自分はダメだな」と思うか、それとも、「頑張っている自分のために意見や指示を出してくれた」と受けとるかで感情は違ってくると思いませんか?

――そうですね、「頑張ったからこそ、意見を出してくれた」と考えたほうが、心が穏やかになるし、やる気が出ると思います。

(小林)ネガティブな感情を抱くと自律神経が乱れます。怒りやイライラ、憎しみを感じると、交感神経が優位な状態になり、体が無意識に緊張してしまうからです。それが心身へ負荷をかけます。ネガティブな感情を抱いたときは、自分がどう反応するのかを冷静に観察することで「心の許容範囲」がみえてきます。もちろん、すべてにおいてポジティブ思考になれたらいいのですが、そう簡単にはいきません。まずは、自分自身の「心の許容範囲」を知ることが重要です。

――「心の許容範囲」ですか?

(小林)社会人になると、いろんな人と接し、さまざまな物事を経験します。そうした人や物、出来事に対してここまでなら受け入れられる、認められるという許容範囲というものが人それぞれにあるのです。心の許容範囲の大きさによって、物事の捉え方、人の言動に対する受け止め方が違ってくるということです。

――私は心の許容範囲が狭いから、ネガティブな感情に振り回されているということですか?

(小林)心の許容範囲は人それぞれだから、狭くてもいいのです。大事なことは、その心の許容範囲を自分で把握できているかということです。

――自分の心の許容範囲なんて、考えたことがありませんでした。

(小林)人が許せない、他人の言動にイライラする、嫉妬心が抑えられない、自信が持てない――。これらは、心の許容範囲を超えているサインです。感情のコントロールができずに怒りや不満を抱えてしまいます。

――あれもこれも……。昨日の出来事を思い出しただけでも、心の許容範囲を超えているサインはたくさん思い当たります。

(小林)怒りや不満を抱えたままだと、仕事の効率はガクンと落ちてしまいます。そんなとき、心の許容範囲を知っていれば、それに見合った生き方ができて、怒りや不満を抱きにくくなりますよ。実際、私は、自分の心の許容範囲は狭いと思っています。だから、人との接し方、仕事のやり方など、自分の限界を超えないように意識しているので、さほどネガティブな感情に振り回されないのです。

――へえ〜。先生も心の許容範囲が狭いんですね。

(小林)それも、私自身が積み重ねてきた経験からわかったこと。仕事を頑張るためにも、自分の心の許容範囲をつねに意識して「これが私だ」と堂々と認めて過ごしていくことが近道です。

――自律神経の安定を最優先させるんですね。

(小林)そうですね。とはいえ、生きていれば負の感情が生まれるのは当然のこと。どれだけ自分の限界を超えないように意識していても、思いがけず、職場でネガティブな気持ちに襲われることもあるでしょう。そんなときは、自分の席を離れて、階段を1、2階分上ったり、下ったりしましょう。大きな筋肉が集まる足には多くの血液が流れています。階段を上ったり下ったりして、足の筋肉を伸縮させることでポンプの役割を果たして血の巡りが改善し自律神経が整います。

最新の研究で、運動は“細切れ”でも十分効果があることがわかってきました。エスカレーターやエレベーターがあっても3~4階程度なら階段を選択することをおすすめします。リズミカルな動きによって自律神経のバランスが整いますよ。

小林弘幸(こばやしひろゆき)
順天堂大学医学部教授。日本スポーツ協会公認スポーツドクター。
1960年、埼玉県生まれ。順天堂大学医学部卒業、同大学大学院医学研究科修了。ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学小児外科講師・助教授を歴任する。自律神経研究の第一人者として、プロスポーツ選手、アーティスト、文化人へのコンディショニング、パフォーマンス向上指導に携わる。また、順天堂大学に日本初の便秘外来を開設し、腸内環境を整えるストレッチを考案するなど、様々な形で健康な心と体の作り方を提案している。『医者が考案した「長生きみそ汁」』(アスコム)、『死ぬまでボケない 小林式グーパー体操』(光文社)などの著書のほか、「世界一受けたい授業」(日本テレビ)や「中居正広の金曜日のスマイルたちへ」(TBSテレビ)などメディア出演も多数。

「自律神経を整える1日の過ごし方」を聞いてきました 小林弘幸 著

「自律神経を整える1日の過ごし方」を聞いてきました
『明日が心配で眠れない』『友だちからいわれた言葉が引っかかる』といった「なんとなく…」の不安や疲れを感じたときに、にっこりラクに生きるための自律神経を整える1日の過ごし方について、自律神経研究の第一人者である小林弘幸先生に聞いてきました。

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(この記事は日本実業出版社からの転載です)

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