はじめに

3.お客様の買いたいものが決まっているとき


(本書p.66-67)

「○○が欲しい」とお客様に言われると、その要望に応えたくなるものです。でも、その要望の奥には、お客様も気づいていない、本当に必要なものやコトが隠れているかもしれません。「なぜそれを探しているのか?」を質問して引き出せれば、よりよい商品を提案できます。

インテリア店でお客様から「この白いベッドの白が欲しい」と言われました。そのベッドは、白の商品自体があいにく生産されていませんでした。それを伝えたうえで、「白い家具がお好きなんですか?」と質問すると、「別にそういうわけじゃなくて、部屋を広く見せられるって聞いたので」と返ってきました。

そこで、「お部屋を広く見せるなら色だけではなく、低めの家具を選ぶのもおすすめですよ」と提案しました。すると、お客様は「そうなんですね。知らなかったです。白以外にも選択肢が広がりました」とうれしそうに商品を選んでいました。「白いベッドが欲しい」の理由は、ほかにも「白が好きだから」「白じゃないといま部屋にある家具と合わないから」「雑誌で見た白の家具がかわいかったから」など、いろいろあるでしょう。

このように、お客様がその商品を欲しくなった理由や経緯を聞くと、思いも寄らない答えを聞き出せます。その理由がわかれば新しい商品を提案できますし、在庫がないときにも別の商品を提案できるなど、お客様によりピッタリな商品選びをお手伝いできるでしょう。


販売員をしていると、自分の接客でお客様に「嫌がられた」と感じ、落ち込んでしまうこともあるでしょう。落ち込んだぶん、お客様のことを考えられるようになっているなら、販売員として一歩前進できているということではないでしょうか。本書には、「こんな時、お客様はどうしてほしい?」のヒントをたくさん書きました。お客様との接し方に迷ったときには、『お客様に嫌がられる接客 喜ばれる接客』を振り返ってみてください。

平山枝美(ひらやま・えみ)[著]
接客アドバイザー。大学卒業後、アパレル企業に入社。入社当初は売り場でまったく声をかけられずに棒立ちしていたものの、売れる販売員は接客の「ひと言」を効果的に使っていることに気づく。
以来、接客のひと言に磨きをかけ、社内全販売員200人の売上トップに。その後、店長として新規店を担当し予算比180〜200%達成し、入社最速でエリア・マネジャーに抜擢される。
担当店舗のマネジメントと店長の育成を担当しながら、不採算店舗を次々と立て直し、売上年間10位だった既存店を1位に押し上げるなどの実績を残す。大手アパレル移籍後も、店長の育成に携わったのち独立。
現在は、無印良品(良品計画)、大型商業施設、インテリア小売店など、アパレルに留まらず小売業全般の接客アドバイスを手がける。著書に『売れる販売員が絶対言わない接客の言葉』(日本実業出版社)、『あの人だけが、なぜ売れるんだろう?』(幻冬舎)がある。

キタハラケンタ(絵)
イラストレーター・キャラクターデザイナー。北海道幕別町生まれ。東京都在住。 埼玉大学教養学部卒業後、桑沢デザイン研究所デザイン専攻科卒業。ステーショナリーメーカーでの企画デザイン、デザイン事務所でのデザイン・ブランディングの経験を経て独立。キャラクターデザインと、ゆるめの線を生かしたイラストレーションが得意。

お客様に嫌がられる接客 喜ばれる接客 平山枝美 著

お客様に嫌がられる接客 喜ばれる接客
押し売りしなくても売上は伸びる! 声かけ・質問・提案・説明・ひと押しなどのテーマ別に、「嫌がられる接客」と「喜ばれる接客」の違いをイラストだけでもわかるように解説。お客様の心の声に応えるコツを身につければ、「スルー」が「買いたい」に変わる。

(この記事は日本実業出版社からの転載です)

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