はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は野瀬大樹氏がお答えします。

現在、不動産投資と投資信託の分配金を主な収入としています。次回の確定申告の際、投資信託からの収入に関しては、毎回所得税および住民税の支払いを行っているので、申告の必要はないと聞きましたがいかがでしょうか?
(50代前半 既婚・子供2人 男性)


野瀬: 確定申告を「やらないとダメ」な人の条件は、法律できっちり定められています。

確定申告を「やらないとダメ」な人

1.給与収入が2,000万円を超える
2.給与所得以外の「所得」が20万円を超える
3.2か所以上から給与の支払いを受けている
4.同族会社の役員で、その同族会社に不動産を貸していて、その会社から賃料をもらっている役員

質問者の方の場合、「2」に該当するため従来確定申告をしていたのだと思います。

そして、不動産投資と投資信託の儲けについて申告納税していたと推察されます。

「特定口座+源泉徴収あり」なら確定申告の必要なし

今回「申告の必要はない」と言われたとのとですが、おそらくそれは正しいです。

投資信託や株式投資の場合、「特定口座+源泉徴収あり」という証券口座を開いていれば、その口座からの投資に関しては基本的に確定申告は不要です。

なぜなら「源泉徴収」というかたちで、証券会社がみなさんに代わって税金を計算して、配当や売却益から税金分を差し引いてくれているからです。

ですから「もうすでに払っている」ので、わざわざ面倒な確定申告をする必要はないわけです。

もちろん、質問者の方は今後も不動産投資を続けるのでしょうから、この部分に関しては確定申告は必要になります。しかし、投資信託については特に確定申告書に記載する必要はありません。

投資で損をしたら必要がなくても確定申告を

では、投資信託に関する部分について、今後も申告しないのでしょうか?

それは今後の事情によります。

投資信託について「特定口座+源泉徴収あり」の場合は、確定申告は「必要ない」のですが、自ら申告をすることはできます。

「不必要なのに、誰がそんな面倒なことするんだ?」と思うかもしれませんが、投資の結果によっては「やったほうが得なので申告する」という状況も考えられるのです。

(1)ケース1:投資で損をした場合

投資信託で損をした場合、その損を3年間にわたり繰り越すことができます。つまり、ある年に100万円の損を出した場合には、翌年仮に100万円の利益が出ても2年分合わせれば「100万円-100万円=0円」なので、税金を払う必要がないのです。

利益が出た年にも当然「源泉徴収」で、一旦20%の税率がかかり、20万円の税金が取られているのですが、確定申告をして「私は去年100万円の損をしています!」と主張することにより、トータルでは「100万円-100万円=0」となり、「取られ過ぎ」になる20万円の税金が返ってくる「還付」になります。

この「今年損をしました!」という証明のためには、還付を受ける年だけでなく、損をした年にも確定申告をする必要がある点に注意が必要です。あとから「実は去年損をしていまして…」と主張してもあとの祭りです。

(2)ケース2:証券口座を複数持っている場合

証券口座を複数持っている場合、口座Aでは100万円の損、口座Bでは100万円の利益がでていたとします。口座Aは損なのでもちろん税金はかかりませんが、口座Bでは100万円の利益なので、20%の税率がかかり、皆さんの手元には80万円だけが儲けとして残ります。

口座Aでは損をしているので、なんだかしっくりきませんよね。

こういった場合、確定申告をすることにより、口座Aの損と口座Bの利益を相殺できるのです。結果「100万-100万=0円」となり、税金は0円です。

そして口座Bでは「100万円-80万円=20万円」がすでに「源泉徴収」されているので、この確定申告をすることにより20万円の税金が返ってくる「還付」となるわけです。

結論として「投資信託については基本的に確定申告はいらない。でも損をした時には確定申告をしたほうがいい」と覚えておくとよいでしょう。

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