はじめに

本当に「高額療養費制度」で自己負担は抑えられる?

今度は実例を踏まえつつ、この制度の「気を付けなければならない点」を見ていきます。

先輩だったTさん。関西出身、頭の回転も速く、人当たりもよいので国内外問わず多くの友人がいます。営業成績も常にトップでした。彼は会社を辞め、自分で会社を立ち上げつつ、別の同期の会社の役員も掛け持ち、独立してからも業績をうなぎ上りに挙げていました。

ところがある時突然、SNSに「これから入院・手術する。退院までに約1か月かかる」と投稿して連絡を絶ったのです。今まで病気の気配すらなかった人なのに。

そして1か月と少し経った頃「この国の制度はなんやねん!しっかり稼いで普段一番税金納めてんのに、なんの恩恵も受けれてない」と新たな投稿が。よくよく話を聞いてみると、高額療養費制度の対象にならなかった、とのことでした。

仕事を掛け持ち、自身の会社の業績もよいので給料も高く、上記表の区分としては【ア】に当たります。

実際に病院で医療費としてかかった額は84万円。ただし、そのうち保険外8万円だったので、対象となる医療費は76万円、それなりの額になりました。3割負担分は22.8万円です。

しかし、今回の件を計算式に当てはめると

25万2,600円+{(76万 – 84万※)×1%} ≧ 22万8,000円
※このカッコ内が0未満の場合は0として計算

となり、自己負担額は【ア】の上限25万2,600円には届かず、全額自己負担。さらに保険適用外の治療費は基本自費となりますので、その分8万円を加えた30万8,000円を医療費として支払ったのです。

彼はいわゆる医療保険には加入していませんでした。ですので、今回の治療はすべて自己負担、貯蓄から支払ったことになります。バリバリに仕事ができる人です。この悔しさを糧に復帰後、早々に支払った医療費以上の成果を出したのは想像に難くありません。

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