はじめに
ポイント(1):制度があるから大丈夫、ではない
さて、この事例をどのように思われるでしょうか。
だから医療保険に入りましょうと言うつもりはありません。
伝えたいのは「制度があるから保険はいらない」と安易には考えないでほしい、ということです。制度があるのは事実ですが、それが適用される条件をまず理解することが大切です。
ポイント(2):上限は毎月リセットされる
区分【ア】でいえば基本の上限は25万2,600円です。
ただし、これは年間の上限ではなく「ひと月当たりの上限」であることも大事なポイントです。
今回のTさんは入院、手術、治療が1か月のうちに終わりました。仮にこれが2か月にわたっていた場合、計算は各月毎のため、さらに高額療養費の対象になりにくく、加えて事務手続きも月毎に必要となります。治療による身体的な負担もある中で、書類を複数回準備するのはかなりの手間といえます。
ポイント(3):同月内でも複数の医療機関にかかった場合には注意を
治療自体は同月内に収まったとしても、複数の医療機関を使った場合はどうなるでしょう。
単純に医療費だけを合算すれば上限を超え、還付を受けられそうであったとしても、各医療機関の医療費の合計が2万1,000円以上のもの(70歳以上の方は受診者別、入院・通院別で全部の自己負担額)しか合算できないので、その場合も高額療養費の対象とならない可能性があります。
上記の医療費自己負担額合計は9万5,000円です。【ウ】区分の場合、単純に計算式に当てはめると
9万5,000円÷0.3=31万6,667円(10割医療費)
8万100円+(31万6,667円- 26万7,000円)×1%=8万597円<9万5,000円
となり1万4,403円が還付されそうですが、合算対象の合計は7万5,000円となり還付される金額はありません。
自分で判断できる知識を身につけよう
全ての保障を自分で準備するのではなく、国の制度を活用するのはとても賢い方法です。だからこそ、周りで言われていることを鵜呑みにするのではなく、まずはその制度をしっかり理解することが重要です。
さらに、その制度を踏まえたうえで、ご自身のライフイベントにアクシデントが起こった場合に想定できる影響をシュミレーションし保険を取り入れるかどうか、また取り入れるのであればどの程度の保障が必要なのかを“判断が出来る知識”を持てることが一番の安心(=保険)、なのかもしれませんね。