はじめに

ライトユーザーにとって一番お得なau

さて、このように格安スマホと対抗するために大手三社はどのような対策を考えたのでしょうか。実はここが三社三様で面白いところです。順に説明していきましょう。

まずiPhone8の64GBモデルを購入する場合、大手三社だとそれぞれ実質いくらで購入できるのでしょうか。新規契約ではソフトバンクが1万7,280円、auが2万7,360円、それに対してNTTドコモは3万1,752円とやや高い印象なのですが、このドコモの仕掛けについては後ほどご紹介します。

さて仮にiPhone8を購入したユーザーが月2GB程度しかスマホを使用しないライトユーザーだったとしましょう。実は私がそうなのですが、メールやブラウザを主に使うだけで月7GBの上限をまったく使いきれないというユーザーの場合、auが今回始めた「使った分に応じて5段階の定額料金が適用される」という「auピタットプラン」に加入することで2年間24か月の月額支払いを約6500円と三社の中でも一番安く設定することができます。

一方でソフトバンクは端末料金を割引きする条件として2GBのデータプランを選択することができないルールを設定しているため、ライトユーザーにとってソフトバンクは割高になってしまいます。なぜソフトバンクはauよりも不利な価格設定を選んだのでしょうか?

ヘビーユーザーを囲い込むソフトバンク

ソフトバンクがライトユーザーに対して割高な料金を設定している理由は、そのようなライトユーザーが一番先に格安スマホに戻ってしまうからだと言われています。

一番安いauのプランでiPhone8を使い始めて、2年たったらSIMフリーにして格安スマホに乗り換えるようなユーザーは、獲得してもまた価格でスイッチしてしまう。携帯会社にとっては割にあわない顧客の可能性があるのです。

一方で一番格安スマホにスイッチされにくいのは、月間で数十GBのデータ量を使うユーザー層。具体的にはゲームをがんがん楽しんだり、スマホで動画番組を一日中見ていたりといったユーザーです。

格安スマホにはそのようなユーザー向けの料金プランは少ないため、携帯三社にとどまります。ソフトバンクはここをよく意識していて、月間20GBのプランは三社の中で一番安くなるように設定しています。

さらに、ソフトバンクの場合はその上の月間50GBプランも今回新たに設定しました。データをたくさん使うユーザーはすべてソフトバンクが囲い込んでいこうという価格戦略になっているのです。

それでは、端末代金がやや高めのドコモはいったいどのような戦略を考えているのでしょうか?

継続ユーザーにターゲットを絞ったドコモ

契約価格の比較をすると三社のプランでドコモが安くなるケースというのはなかなか見当たりません。しかしひとつそのような比較には落とし穴があります。ドコモは端末の値下げに踏み込まない分、価格が割高に見える一方で、継続利用者に対して手厚い還元策を打ち出しています。

今回継続利用者に対するサービスとして、新機種変更応援プログラムを打ち出しました。たとえば1年間ドコモを利用し続けたiPhone8のユーザーが、2年目に新しいiPhoneに買い替える場合、最大4万ポイントがポイントバックされます。すると、端末の購入価格は実質約2万円まで下がる計算になります。

このように常にドコモを使いつつ、1年や1年半単位で新しく登場するiPhoneに乗り換えていくようなユーザーにとっては「ドコモを使い続けるのが一番得になる」という価格政策を打ち出していたわけです。

さて、いずれにしてもiPhone8商戦が始まったいま、各社の思惑通りに消費者は動くでしょうか。それとも格安スマホ会社が新たな対抗策を打ち出すのでしょうか。熱い戦いがまた始まりそうです。

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