はじめに
年金改定3つのルール
改定ルールを見ていきましょう。
年金改定ルール1:賃金スライド
年金は、世代間の仕送りの制度です。家族間でも、現役世代の子が、高齢の親に仕送りすることがあるでしょう。同様のことを、国全体の制度として行っているのが老齢年金です。
ですから、現役世代の子としては、収入が多ければたくさん仕送りしてあげられますが、少なければ、その分仕送りが少なくても仕方ありません。
同様に、国全体の賃金=収入の変動率に合わせて、年金額を変更するのが「賃金スライド」というルールです。厳密には、賃金スライドは名目手取り賃金変動率によって変更します。
名目手取り賃金変動率とは、2年度前から4年度前までの3年度平均の実質賃金変動率に前年の物価変動率と可処分所得割合変化率を乗じたものです。 2022年度の改定では、名目手取り賃金変動率が以下の計算により-0.4%でした。
2018~2020年度の平均実質賃金変動率(-0.2%)+2021年の物価変動率(-0.2%)×2019年度の可処分所得割合変化率(0.0%)
※可処分所得割合変化率はゼロのため、(-0.2%)+(-0.2%)=-0.4%
賃金スライドは、新規に老齢年金を受け取り始める人の年金額についてのルールです。これから受け取ろうとする高齢世代の年金額は、現役世代のお財布事情によって変化する、というルールです。
年金改定ルール2:物価スライド
年金暮らしを続けている人にとっては、年金額がいくらに変更されるかは、生活を左右する大きなことです。先月までもらっていた金額から大幅な減額をされてしまったら、生活が立ち行かくなってしまいますよね。
そのため、すでに年金を受け取っている人に対しては、「物価スライド」のルールが適用されます。
物価スライドは、総務省が作成する年平均の全国消費者物価指数によって決まります。
2021年の消費者物価指数は、2020年とくらべて、-0.2%でした。
そのため、物価スライドは-0.2%なのですが、賃金スライドのマイナス分が物価スライドよりも大きい場合には、賃金スライドを適用する、という特別ルールがあります。
そのため、2022年度改定では、すでに年金を受け取っている人も年金額が-0.4%になります。これは、年金制度をささえる現役世代の負担能力に応じた年金額とする、という観点によるものです。家族間でたとえると、昨年までは○○円の仕送りができていたけれど、収入が減ってしまったから今年は少なくなるけど我慢してね、ということです。