はじめに
分かりやすく、手間いらずな点が魅力のインデックス投資。日経平均やTOPIX、ダウ平均といった株価指数などと同じ値動きを目指すもので、数ある投資のなかでは比較的安定して資産を築けるため、本業のある会社員向きともいわれる投資法だ。
インデックス投資は大きく「インデックスファンド(インデックス型の投資信託)」と「ETF(上場投資信託)」に分類されるが、それぞれの金融商品にはどんな違いがあるのだろうか?
双方の特徴やメリット・デメリット、さらには使い分けのコツについて、『全面改訂 ほったらかし投資術』の共著者でインデックス投資ブロガーの水瀬ケンイチさんに聞いた。
今回お話を聞いたのは、日本経済新聞やマネー誌などに数多く取り上げられるインデックス投資ブロガーの水瀬ケンイチさん。IT企業に勤務しながら、堅実に資産を築いている
インデックスファンドとETF、それぞれの特徴やメリットは?
「インデックスファンドは投資信託の種類のひとつ。数千円程度の少ない金額から購入でき、多様な銘柄に分散投資できます。売買は1日1回、『基準価額』で取引するのが特徴です。ちなみに、売買を申し込む時点では基準価額は決まっておらず、当日の夜もしくは後日、運用会社が発表します。したがって、買う際にはそれまでの値動きなどを参考に、『だいたいこれくらいの価格だろう』という感じで『えいや!』と買い、後日、『どれどれ、いくらで買えたかな』と確認することになりますね。
一方、ETFは『上場投資信託』といい、証券取引所で取引される投資信託のことです。上場されているため、株式と同様に証券取引所が開いている時間はいつでも売買ができます。価格もリアルタイムに変動しているので、インデックスファンドと違って売買時にも価格がはっきり分かり、値動きや損益が把握しやすい性質があります。以前は日経平均とTOPIXのETFばかりでしたが、最近は外国株式や外国債券、金や石油といったコモディティなど、商品の幅が急速に広がっていますね」(水瀬さん、以下同)
では、インデックスファンドとETF、それぞれのメリットは?
「まず、インデックスファンドの魅力は利便性の高さ。たとえば、金額指定で売買できる、分配金を自動的に再投資できる、自動積立サービスを利用できるなど、投資家がラクをするための条件が整っています。かたやETFは利便性という点では劣りますが、インデックスファンドよりも信託報酬が安く設定されていることが多く、運用コストを抑えられるのが魅力です」
水瀬式「誰にでもできるマネー運用マニュアル」
水瀬さんが運営するブログ「梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー」。下町個人投資家のインデックス投資実践記 ※この画像はサイトのスクリーンショットです
それぞれ一長一短があるようだが、実際に運用する際はどのように選べばいいのか?
「基本的にはそれぞれの特徴を理解したうえで、ご自身に合ったものを選択していただければと思います。インデックスファンドの利便性は長く投資を続けたい人向きですし、まとまったお金があり、多少の手間を許容できるなら低コストなETFがおすすめです。いずれにせよ両者ともに高品質ですので、その中から選択できるのは贅沢な悩みだと思いますよ」
とはいえ、何らかの指針はほしい。そこで誰でもできる「マネー運用指南」をざっくりとご教示いただいた。
「まず、運用するお金を『無リスク資産』と『リスク資産』に分けます。そして、リスク資産部分は、全世界の株式(日本・先進国・新興国)に広く分散したインデックスファンドやETFに投資します。商品選択の基準は、『最も手数料の安いもの』です。
この運用法の大事なポイントは、短期的な市場の騰落にあわせて『売買』することでリターンを得ようとするのではなく、インデックスファンドやETFを『長期保有』するところです。短期的には市場が大きく値下がりすることもあるでしょうから、大損しても耐えられるくらいの金額で運用するのがよいと思います。逆に、そこで腹をくくれれば、何もしなくても長期的には世界経済の成長程度のリターンが期待できるでしょう」
最後に水瀬さんはインデックス投資の意義を次のように語ってくれた。
「運用会社のプロは、インデックスに追随するために大変な努力と苦労をされています。ただ、個人投資家がそのような努力をしたからといって、努力に見合うリターンが得られるわけではない。それは、私も昔に個別株投資をやっていたときに痛感しました。インデックス投資は投資家が手間なく平均的なリターンを獲得する仕組みです。下手に個別株に手を出すよりは、インデックスファンドもしくはETFを買ってじっと待っているほうが、はるかに良い結果を生むのではないでしょうか」
水瀬さんは自身を、投資が仕事でも趣味でもない「普通の人」と認識している。同じく、普通の会社員が長期的に資産を形成するのに、インデックス投資は有効な手段といえそうだ。
(榎並紀行/やじろべえ)