はじめに
これからも「お金持ち層」が増え続ける理由
スイスのチューリッヒに本社を置く欧州系金融大手のクレディ・スイスのシンクタンクが2019年に発表したデータによると、100万ドル(約1億円)以上の資産を持つ成人の数が世界で一番多いのはアメリカ、2番目が中国、3番目が日本なのだそうです。
【資産総額100万ドル以上を持つ人の数】
その数は今後も増加する見込みで、2019年時点での日本における総資産額100万ドル以上の人の数は302万人ですが、2024年には516万人と71%増になるのだとか。世界全体でも34%増の見込みが立っていますが、日本の増加率が世界の中でも一番大きいという予測がされているのです。
「資産を持たないと損」は理論的に証明された
今、世界では 「お金持ち」と「そうでない人」の二極化が進んでいます。お金持ちはますますお金持ちになり、そうでない人はますますお金がなくて苦労するという格差社会が世界中で顕在化し、社会問題になっています。
その理由を世界中に知らしめたのが、2014年に世界的ベストセラーとなったフランスの経済学者トマ・ピケティ氏の『21世紀の資本』 という本です。
日本語版は728ページ・定価5500円(税別)という難解で高額な本であったにもかかわらず、13万部を超えるヒットとなりました。
この異例の大ヒット本の中核をなす主張がまさに、今後「お金持ち」と「そうでない人」の二極化が進み、その差は大きく開いていく、ということでした。ピケティ氏はそれを次のように表現しています。
【資本収益率(r)と経済成長率(g)の比較】
長期的に見ると、資本収益率(r)は経済成長率(g)よりも大きい。
「r(資本収益率)」とは、株式投資や不動産投資などによる利益、配当、利子、賃料などといった資本からの収入を、その資本の総価値で割ったものです。
「g(経済成長率)」とは、所得やGDPなどの伸び率のことです。
すなわち「r>g」とは、「資本所得の伸び率は賃金の伸び率を上回る」 ということです。
資本所得は、資産を持っている人(=資産家)でないと得ることができません。つまり「r>g」とは、「資産家(=お金持ち)はより裕福となり、労働でしか富を得られない人は相対的にいつまでも裕福になれない」ことを意味しているのです。
ピケティ氏はその差を埋めるためにはどうしたらいいか、ということについての論を『21世紀の資本』の中で展開しているのですが、それについてはここではあえて触れないこととします。
それより「資産を持っていないと損!」ということが、理論的にも証明されていることに目を向けていただきたいと思います。