はじめに
インフレ、3つの根本
まず原油価格ですが、いまの原油価格は上昇要因をほぼすべて織り込んで高値にあります。ロシアのSWIFT除外のタイミングでロシア産の原油が出回らなくなるという状況を市場は織り込んだはずです。これより強い需給要因はもう出ないでしょう。反対に需給を緩ませる材料はこの後、まだまだ出てきます。ウクライナ危機の帰趨は見えませんが、遠くない時点で停戦に及ぶと期待されます。そうなれば戦時プレミアムの剥落で原油価格などはピークアウトがはっきりするでしょう。
次にコロナ感染ですが、こちらも落ち着き始めています。それをうけて米国では労働市場の正常化が進んでいます。直近の失業率は3.8%と、2020年2月以来の水準に改善しました。非農業部門雇用者の総数は1億5,000万人の大台を回復しました。時間当たり平均賃金は31.58ドルと前年同月比では5.1%の上昇ですが、前月の前年同月比5.7%上昇から見れば伸びが鈍化しています。前月比では横ばいでした。人手不足が解消されつつある兆候でしょう。これで賃金インフレにもピークが見えたといえます。
残るインフレの根本は何かといえば住宅費です。これは米国の消費者物価指数(CPI)の最も大きなウエイトを占める部分です。実は住宅価格や家賃の上昇が問題になったのは新型コロナのパンデミックのかなり前からです。その背景は世界的なカネ余りです。早い話が金融緩和の弊害として不動産バブルが発生し、家賃上昇という経路でインフレ率を押し上げてきたのです。戦争やパンデミックがインフレを加速させていることは確かですが、それはあくまで特殊要因であって、インフレの根幹は教科書的なものなのです。そうであるなら伝統的な金融政策が機能する余地は十分にあります。
問題はいつ、どのタイミングでインフレ・ピークアウトの兆しが見えるか、です。早ければ夏ごろに見えるのではないかと思います。その場合、中間選挙を秋に控えてFRBの金融引き締めのペースが年後半は緩やかになる可能性があります。当然、株式市場の追い風になるでしょう。