はじめに
物価上昇の中身を見ると
なぜ物価が上昇しているのか、中身を見てみましょう。
総合指数の中身を細分化した「10大費目指数」で見ると、食料のうち生鮮食品の前年同月比が10.1%上昇していますが、基本的に生鮮食品は天候に左右される部分が大きいため、あまり考える必要はないでしょう。実際、経済活動に焦点を当てて消費者物価指数を見る時は、「生鮮食品を除く総合指数(=コア指数)」で見るのが一般的です。
経済活動と密接に関係しているところで注目したいのは「光熱・水道」です。何と前年同月比で15.3%の上昇となっています。品目で言うと、電気代が19.7%、灯油が33.5%、そして「交通・通信」のうちガソリンが22.2%、それぞれ前年同月比で上昇しています。
ちなみに「交通・通信」は前年同月比▲7.4%と大幅なマイナスとなりましたが、これは携帯電話の通信料が▲53.6%と大幅に下落したためです。これについては他でもよく言われているように、菅前政権下における携帯電話料金の値下げによる影響が大きかったためです。恐らく4月以降はこの特殊要因が剥落するため、その分、消費者物価指数は上昇に転じ、日銀が目標値としている2%に乗ることもあるかも知れません。
エネルギー価格の高騰と円安
消費者物価指数の2%乗せで、いよいよ日本はデフレ経済から脱却します。しかし、それは決して手放しで喜べるようなことにはならないでしょう。
日銀がイメージしていたのは、経済活動が活発になり、企業が従業員への賃金を引き上げることを通じて、世の中に楽観ムードが広がり、個人消費が押し上げられ、結果的に消費者物価指数が2%上昇する、ということです。
でも今、世界的に進行しているインフレは、世界経済が大好況に沸いているからではなく、ロシアによるウクライナ侵攻に対する西側諸国の制裁措置と、ロシアの対抗措置にともなうエネルギー価格の高騰に端を発しています。原油価格の指標的存在であるWTIは、2020年4月末に1バレル=19ドルまで下落した後、2022年3月にかけて124ドルまで上昇しました。
加えて日本においては円安の影響も無視できません。今年1月24日には1ドル=114円だったのが、4月15日には126円台まで円安が進みました。これが何をもたらすのかというと、日本国内に輸入されるモノの値段の上昇です。企業物価指数によると、2022年2月の輸入物価指数(円ベース)は、前年同月比34.3%の上昇となり、さらに企業物価指数は1月の9.2%上昇に続き、2月は9.7%の上昇になりました。