はじめに

米国をはじめ各国で金融引き締めの動きが加速するなか、株式市場とともに暗号資産市場も相場が落ち込んでいますが、暗号資産、なかでもNFTへの強い関心は継続しています。NFTマーケットプレイスのOpenSeaでは、この4月にイーサリアム上で日次の最高取引高を更新し、月間の取引高でも約35億ドルと高い水準を保っています。

NFTとは「Non-Fungible Token」(ノン ファンジブル トークン)の略で、日本語では「非代替性トークン」といいます。その説明についてはMONEY PLUS編集部の記事があるので割愛しますが、ここではデータを区別する技術として覚えてください。この技術によって様々なデジタルコンテンツを市場で取引することができるようになりました。

NFTは昨年から暗号資産市場の一大ブームとして注目を集めていますが、ユーザーとしてNFTを持つことで何ができるのか、その価値が一般にはわかりづらいと思います。NFTで管理されるデジタルコンテンツが唯一無二のものだとは言っても、その画像や動画など、表側のデータはコピーできてしまうことがほとんどです。

以下では、退屈そうな猿の顔をモチーフとした人気NFTコレクションの「BoredApeYachtClub(以下、BAYC)」の事例によってNFTの用途をいくつか紹介しつつ、NFTが持ちうる価値とは一体何であるのかを一緒に考えたいと思います。


NFT所有によってどんな体験が得られるの?

NFTへの投資が話題となっていても、多くの人は「NFTは結局のところ、コピー可能な、ただのデータじゃないか」という疑問を抱くでしょう。約75億円という歴史的金額で取引されたBeepleのデジタルアートのような例もありますが、確かにNFTに紐付くデータだけに目を向けた時には、ほとんどのNFTは価値を持続することが難しいと思います。しかし、最近ではNFTを所有することによって得られる体験が多様化しており、NFTは「デジタルコンテンツ付きの権利証」としての性質が強くなっています。

コミュニティの一体感

日本でもオンラインサロンが流行したように、NFTはあるコミュニティの会員権として機能します。BAYCでは所有者だけが参加できるSNSグループがあり、オープンな場でも所有者たちがBAYCをプロフィール画像に設定することによって、コミュニティとしての一体感が出ています。BAYCについては海外のセレブリティも投資しており、最低価格が数千万円にのぼることから、今後は富裕層クラブとしての意味合いも強まっていくことが予想されます。

デザインの二次利用

NFTで使われるデザインの権利はクリエイターや発行元に帰属することも多いですが、その権利をNFTの所有者に対して認めるケースも増えています。BAYCでは所有者がBAYCのデザインを施したグッズを販売したり、レストランをオープンしたりする動きがあります。BAYCの運営元は、所有者に商用利用権などの権利を認めることで、コミュニティが一体となってBAYCのブランドを作り上げることを期待しています。

メタバースでのアバター利用

「メタバース(仮想空間)」への社会的な関心が高まるなか、仮想空間上におけるアバターとしてNFTを利用できるように計画するコレクションが増えています。多くがサンドボックスやディセントランドといったメタバース関連のプロジェクトとの提携に動いていますが、BAYCの運営元は「Otherside」と呼ばれる独自のメタバースの開発を進めており、所有者はその中でBAYCアバターを身にまとって活動できるようになる予定です。

追加報酬の受け取り

NFTを所有することで関連する暗号資産やNFTを追加的な報酬として受け取ることができる場合があります。BAYCでは姉妹プロジェクトである「MutantApeYachtClub(以下、MAYC)」をリリースする際に、BAYCの所有者に対して突然変異の血清をNFTとして配布し、BAYCと血清を配合することによってMAYCを作り出せるようにしました。その後、BAYCとMAYCの所有者には独自の暗号資産であるApeCoin(APE)を無償で配布しました。

BAYCでは映画制作が進められており、所有者は自身のコレクションの出演を賭けてオーディションに参加することができるなど、ここで紹介したもの以外にもNFTは様々な権利を備えたデジタルコンテンツとして活用されています。全体に共通することとしては、NFTを所有することによってコミュニティの活動に関わることができるということです。NFTの価値はコミュニティの会員権としての価値と言えるのかもしれません。

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