はじめに
「米小売売上高」に注目
インフレ動向を把握する上でもう一つ、注目したい経済指標があります。
5月17日に発表される「小売売上高」は、その名のとおり小売の売上高を示した主要マクロ経済指標の1つです。毎月、米国商務省が発表し、米国の百貨店やスーパーの小売のほか、サービス業の月間売上高が集計されており、米国の個人消費の動向を把握することができます。つまりインフレにも関連する経済指標なのです。
米国は世界一の消費大国で、GDPの約70%を占めるのが個人消費のため、インフレのみならず米国の個人消費の動向を知ることが米経済、そして世界経済を予想する上で重要となるので、市場の注目度が非常に高い指標となっています。
米小売売上高には「小売売上高」と「コア小売売上高」があります。小売売上高は全てをカバーしているので、米国の個人消費で割合が高い自動車や、自動車関連の部品の影響が大きくなります。コア小売売上高は、変動の多い自動車・ガソリン・建材などを除いたもので、GDPの個人消費の構成要素に近いため、GDPの予想に用いられるため、より注目されています。
5月9日週「相場の値動き」おさらい
米市場では主要3株価指数指数(ダウ、ナスダック、S&P500)がそろって年初来安値を更新しました。5月のCPIの結果を受けて、エネルギー価格高止まりと労働市場がきわめてタイトであることから、FRBの金融引き締めがより積極的になるのではとの懸念が高まった模様です。地政学リスクの長期化懸念や、中国のゼロコロナ政策も売り材料となっています。
今週の日本市場では決算発表が本格化しましたね。為替相場の円安が寄与した企業も多かったようです。
トヨタ自動車(7203)が5月11日に発表した2021年度連結決算では、売上高、純利益がともに過去最高を更新。ただ原材料費高騰は大きな問題となっているようです。ソニーグループ(6758)の2021年度の売上高、営業利益は過去最高で、営業利益は前年比25.9%増 1兆2023億円と初の一兆円越えでした。
また、原油やガス開発国内最大手であるINPEX(1605)の22年12月期第1四半期の連結経常利益は、前年同期比2.6倍の2778億円に急拡大。通期の経常利益も過去最高益予想をさらに上方修正したほか、グローバルで旺盛なアルミ需要を追い風に、アルミニウム圧延メーカーのUACJ (5741)は過去最高益を達成しており、22年度も増収増益を見込んでいます。
一方で12日午後にソフトバンクグループ(9984)が発表した2022年3月期連結純損益は1兆7080億円の赤字に転落。前期は4兆9879億円と国内企業で過去最高の巨額黒字でしたので一転して……という状況です。
週末5月13日(金)の日経平均株価の終値は、前日比678円93銭高の2万6427円65銭と大幅反発。前週末5月6日(金)の日経平均株価は2万7003円56銭でしたので、週間では575円91銭の下落となります。週間では下落しましたが、財務省が12日(木)に発表した対外及び対内証券売買契約などの状況によれば、円安などを背景に海外投資家が4月に日本株を3カ月ぶりに買い越している模様です。
5月16日週は、17日(火)に米小売売上高が発表されるほか、18日(水)に日本のGDP速報値が発表されます。注目してみてください。