はじめに

5月の「FOMC」では予想通り通常の倍の0.5%の利上げと、6月から保有資産の圧縮開始が決定されましたね。6-7月も0.5%の利上げの可能性が示されているものの、0.75%のトリプル利上げに関してはパウエルFRB議長が慎重な姿勢を示しました。とはいえ、通常0.25%ずつ利上げすることを考えると急ピッチの金融引き締めであるといえます(FOMCについて、詳しくは連載第5回をご覧ください)。

その背景には、あまりにも高いインフレと、インフレ抑制に迅速に動く必要性があることや、労働市場がきわめてタイトであることなどが、FOMC後のパウエル議長会見で伝えられています。


インフレを表す消費者物価指数

インフレとは、全体的な物価水準が持続的に上昇する状態を指します。例えば、今まで100円で変えていたパンが120円に上昇します。すると、同じパンを買うのに1.2倍のお金が必要になるので、お金の価値が下がったと言えます。しかし、物価が上昇すると企業の収益も高まり賃金として消費者にも還元されるので、消費活性化=好景気に繋がります。このように、一般的に経済が成長していく過程では適度なインフレ率の上昇を伴いますが、過度なインフレ(高インフレ)は物価上昇に対してお金の価値が下がりすぎて消費が抑制されるため、経済にとって危険となります。今まで100円で変えていたパンがいきなり300円にまで値上げしてしまうと、さすがに手が出せなくなってしまいますよね?

冒頭お伝えしたように、いま米国では高インフレの抑制を目指し、過去数十年で最も積極的な引き締め策が講じられるわけですが、ということはインフレの動向を把握することが今後の経済を予測する上で重要となってきます。どのくらいインフレが進んでいるのかを見極める上で重要な経済指標の一つ、消費者物価指数(CPI:Consumer Price Index)が5月11日に発表されました。

CPIは、インフレ状況を把握するために多くの国で一般的に採用されている指標で、小売物価の変動を月次ベースで追ったものです。全国の世帯が実際に購入している製品や使っているサービスの価格が平均的にどう変動しているのかを測定した指数です。物価は消費が促進されていると上昇(値上げしても売れる)し、消費が抑制されていると下がる(値下げしないと売れない)という傾向にあるため、CPIはインフレ率に関する重要な指標となります。

11日に発表された4月の米CPIは前年同月比8.3%上昇。伸びは前月の8.5%を下回ったものの、エコノミスト予想の8.1%を上回っています。CPIが上昇するということはインフレ傾向にあるということですし、米国の金融政策ではインフレターゲット2%を目標としていますので、8.3%という数字を見るとかなり深刻なインフレ状況が続いているといえます。この結果を受けてFRBの金融引き締めがより早まるのではないかという懸念が高まりました。

また、多くの国では消費者物価指数と並び、生産者物価指数(PPI:Producer Price Index)を公表していますが、これは小売業者から生産者に支払われた価格の変動を追ったものです。一般的にPPIは、インフレのサイクルの中では比較的早い段階で上昇する傾向があります。12日に発表された4月PPIは前月比0.5%上昇と市場予想と一致しましたが前年同月比では11.0%上昇となっています。

高インフレの主な原因は、物価の急激な上昇です。原材料や資材・エネルギー価格が上昇すれば、商品の製造やサービスのコストが全般的に上昇します。特に原油価格の上昇は経済に対して広範な影響を与えますので、現在の地政学リスクによるエネルギー価格の高騰継続はコストとして消費者、企業にとってより直接的に重くのしかかることとなります。

なお、日本のCPIは原則として毎月19日を含む週の金曜日、午前8時30分に公表していて、次回は5月20日(金)に発表予定となっています。

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