はじめに

読解力が求められる数学のテスト

初めての共通テストとなった2021年度(令和3年度)入試の問題を見ると、数学の問題では、中高一貫校の適性検査型入試でおなじみの太郎さん花子さん問題が出されていました。

問われる内容はこれまでのセンター試験とさほど変わらないのですが、国語のように文中にある穴を埋める形式になっているため、読解力が求められました。もちろん、数学的知見がなければ答えを導き出すことはできませんが、読解力も求められたのです。

そして、各大学で実施する入試についても変化が見られます。共通テストの実施に合わせたかのように、入試科目を変更する大学もありました。また、早稲田大学の看板学部、政治経済学部が共通テストの数学の受験を必須にしたのは大きな話題となりました。これにより“私立文系は数学ができなくても合格できる”という神話が崩れることになりました。

早稲田大学総長の田中愛治氏は、2020年に行われた「週刊東洋経済」の取材に対し、全学に数学入試を導入することは2〜3年前から議論していたと回答しています。そして、政経の入試で数学を必須にしたのは、入学後の勉強に必要な基礎学力として、数学が必要だからだと述べています。

実際、政治学の分野でもデータ科学的な研究が行われるようになっています。元々数学的素養が求められることの多かった経済学部に加え、すべての学部でデータを使った研究が進められています。もはや数学は大学生である以上、知っていて当然、活用できて当然の必要不可欠な科目となりつつあるのです。

宮本さおり(みやもと・さおり)
教育・子育て分野を中心に執筆するジャーナリスト。同志社女子大学卒業後、地方紙記者として文化・教育紙面を担当。2004年、夫の留学に伴い渡米し、シカゴにて第一子の子育てに専念。2008年から教育、子育て、ワークライフバランス分野を中心に取材活動を再開。2015年より老舗中学受験雑誌『私立中高進学通信』で外部記者として学校取材を担当。
近年は「AERA」や「東洋経済オンライン」などで執筆。「東洋経済オンライン」のルポ連載「中学受験のリアル」は毎回人気記事ランキングにランクインする人気連載に成長。2019年、親子のための中等教育研究所を設立。「東洋経済オンラインアワード2020ソーシャルインパクト賞」受賞。プライベートでは大学生と小学生の子を持つ母。

中村力(なかむら・ちから)
北海道大学大学院理学研究科修了。公益財団法人 日本数学検定協会 学習数学研究所 研究員。日本数学検定協会において、「ビジネス数学検定」と「データサイエンス数学ストラテジスト」資格試験の立ち上げに全面的に関わった。著書に『完全ガイド! 数学検定1級 出題パターン徹底研究』(森北出版)、『ビジネスで使いこなす「定量・定性分析」大全』(日本実業出版社)などがある。

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(この記事は日本実業出版社からの転載です)

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