はじめに

暗号資産ヘッジファンドのスリー・アロウズ・キャピタル(以下、3AC)が2022年7月、米国で破綻申請しました。3ACはビットコインやイーサリアム、ソラナ、ポルカドット、アバランチ、テラなど、昨年に価格を大きく伸ばした数多くの暗号資産プロジェクトに投資しているヘッジファンドです。2022年に入ってからはテラ騒動が起きて以降、相場の急落を受けて経営状況が悪化しました。

暗号資産ヘッジファンドは米ドルなどの法定通貨で暗号資産プロジェクトに投資して、そのプロジェクトが発行する暗号資産を代わりに受け取ります。暗号資産が値上がりしているときにはそれを売らずに保有したまま、暗号資産レンディングサービスなど、さまざまな手法で運用します。
 
なぜ好調であったはずの3ACは破綻にまで追い込まれてしまったのか−−相場が急落した影響はもちろんありますが、それには暗号資産レンディングサービスなどを利用する上でのリスクが大きく関係しています。今回は暗号資産を預け入れてお金を稼ぐ仕組みとその注意点について、3ACの問題を読み解きながらみていきましょう。


暗号資産を預け入れてインカムゲインを稼ぐ3つの仕組み

これまでは暗号資産というと値上がりによるキャピタルゲインが中心でしたが、最近では暗号資産を預け入れることによって利回りでのインカムゲインが得られる環境も整っています。世界的な低金利のなか銀行預金では1%も金利がつきませんが、暗号資産では数%から高いものでは10%以上の金利がつく預託サービスもあります。

暗号資産の預け入れ方には大きく分けて3つのパターンがあります。1つ目は暗号資産を相手と貸し借りする「レンディング」です。これは銀行におけるお金の貸し借りと同じで、取引所などに暗号資産を貸し出して金利を得たり、逆に暗号資産を担保にお金を借り入れたりすることができます。有名なレンディングでは、3ACと並んで経営状況が悪化しているブロックファイやセルシウスなどがあります。

2つ目は主に分散型金融(DeFi)サービスに流動性を提供する「イールドファーミング」です。これは役割としては株式等のマーケットメイクに少し似ていますが、暗号資産を取引所などの資金プールに預け入れることで取引の流動性を提供することです。これによりプールから報酬を得ることができます。有名なイールドファーミングでは分散型取引所のユニスワップやステーブルコイン取引所のカーブファイナンスなどがあります。

3つ目はブロックチェーンネットワークのエコシステムに貢献する「ステーキング」です。これはブロックチェーンネットワークに暗号資産をロックしてノードと呼ばれる参加者になることです。ブロックチェーンのノードとして取引の検証作業などを行うことで報酬を得ることができます。有名なステーキングではイーサリアム上で最大のシェアを誇るリドなどがあります。

いずれも暗号資産を預け入れて受動的な収入を得るという点では同じですが、暗号資産を預け入れる先や目的が異なっています。

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