はじめに
2022年4月に年金の大きな改正がありました。その中でも話題になったのが、年金の受給開始を75歳まで延長できることです。
それまでは、60歳から70歳までに年金を受け取ることができましたが、5年延長になり75歳までの受け取りが可能になったのです。60歳から75歳までの15年間であれば、どの時点で年金の受け取りを開始するかは自分で決められます。つまり選択肢が広がったといえます。
そこで考えたいのは「いったい、いつ受け取るのがもっとも得をするの?」ということです。年金の受け取るベストタイミングっていつなのか?を解説してみます。
年金の「繰上げ受給」「繰下げ受給」とは
一般的には、65歳から年金を受給開始することが多いはずです。
これよりも受け取りを早くして、60歳から65歳までの間に受給開始するのを「繰上げ受給」といいます。しかし、繰上げ受給すると、年4.8%の減額になります。早く受け取ると最初は得になりますが、長生きをすると損になります。
逆に受け取りを遅くして、66歳から75歳までに受給開始するのを「繰下げ受給」と言います。年8.4%の増額になります。最初は、年金を受け取っていないのですから損になりますが、長生きをするとどんどん得になります。
得する受け取りのベストタイミングは、死ぬまでに受け取った年金の受給総額がもっとも多くなるときです。
でも、これには大きな問題があります。それは、「いつ死ぬのか?」がわからないことです。「死ぬ時期」がわかれば、迷わず「ここです!」という答えを出すことができますが、答えは出ません。いきなり降参してしまい、すみません。
しかし、平均寿命を考えるとだいたいの予測はできます。
寿命別の年金受給ベストタイミング表
まずは、死亡年齢別の受給総額がもっとも多い年齢は次のようになります。
( )の数字は、65歳の時点で、年金の受給額が150万円だった場合の総受給額を入れました。
死亡年齢65歳=受給開始60歳(総受給額684万円)
死亡年齢70歳=受給開始60歳(総受給額1254万円)
死亡年齢75歳=受給開始60歳(総受給額1824万円)
死亡年齢80歳=受給開始67歳(総受給額2452.8万円)
死亡年齢85歳=受給開始70歳(総受給額3408万円)
死亡年齢90歳=受給開始72歳(総受給額4525.8万円)
死亡年齢95歳=受給開始75歳(総受給額5796万円)
死亡年齢100歳=受給開始75歳(総受給額7176万円)
このように死亡年齢により、もっとも得する年金の受給開始年齢が違ってきます。95歳以上生きるとすると、75歳で受け取るのがもっとも総受給額が多くなります。
男性の平均寿命は約81歳で、女性の場合は約87歳です。平均寿命はどんどん延びています。現在50代の人が、80歳になるころには平均寿命は90歳に近づいています。女性の場合は90歳を越えてくるのではと予想されます。
ということは、女性の場合は、受給開始を75歳にするのは、ありえる選択だと思います。一方、
男性の場合、受給開始を70歳に設定してもいいのではないかと思います。
もちろん、寿命は誰にもわかりません。これは、あくまでも年金の総受給額を比較した計算です。現実の生活では、75歳まで年金を受け取らなくても生活ができるのか?老後資金だけで暮らしていけるのか?という問題は当然あります。