はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は深野康彦氏がお答えします。
先日、夫が亡くなり約1,000万円の死亡保険金が入りました。現在、私は自営業を営んでおりますが、経営はあまりよくなく、収入はほとんどない状態です。2、3年で現在の商売に見切りをつけ、パートなどで働ければとは思っていますが、老後、年金だけで生活するのは厳しいと思うので、1,000万円を老後のために、どのようにやりくりすればいいかを悩んでおります。
現在、保険は月額5万円ほど払っています。これらの保険については掛け捨てではないものの、それとは別に、少しでもこの1,000万円を増やせる方法はありませんでしょうか?
(50代前半 子供2人 女性)
深野: ご主人が亡くなったという大変な状況のなかで、ご質問をいただきありがとうございます。
回答に入る前に気になるのが、ご質問の中に、先日ご主人を亡くされたと書かれていることです。
もし平成29年に亡くなったのであれば、ご主人の今年の収入に対しての「準確定申告」を、亡くなってから4ヵ月以内に行う必要がありますので、忘れないでください。
また、お子さんが18歳未満であれば遺族年金を受け取ることができるので、その点も確認されてください。
では、ご質問の回答に移らせていただきます。
資産形成を考えるなら「払い済み保険」に変更
現在、自営業をされていて、収入はほぼないと書かれていますが、先行きが見込めないのであれば赤字(持ち出し)にならないうちに、事業を畳んだ方がよいと思われます。
そして、1,000万円の運用方法の前に気になるのが、毎月5万円を保険料として払われていることです。
現在掛けている保険は掛け捨てではない、と書かれていることと保険料から推測するに、現在加入中の保険は養老保険か終身保険だと思われます。
これらの保険は確かに掛け捨て保険ではありませんが、死亡保障が付いているため、一般的には利回りがいいとはいえず、老後の資産形成を見据えているのであれば、おすすめすることが難しい保険です。
毎月の保険料負担が厳しくないのであれば、このまま続けるのも手ですが、利回りを考えれば「払い済み保険」に変更されてはいかがでしょうか。
払い済み保険とは、現在の解約返戻金を基に保障額の小さな養老保険などに変えるものです。保障額は小さくなりますが、年が経過するごとに解約返戻金は増えていくので、現在よりも資産形成ができるようになります。
国民年金は60歳以降も継続して満額受給に
そして、ご相談の1,000万円の運用方法です。まず、ご質問者は自営業であることから、加入している年金は国民年金のはずです。
今後、職に就く際、厚生年金に加入できるようなパートがあればよいのですが、パートをされても国民年金のままであれば国民年金基金、または付加年金に加入されるとよいはずです。
ともに掛け金は全額所得控除扱いになることから、節税にもなるはずです。
また、60歳時点で国民年金の加入期間が40年(480ヵ月)に満たないのであれば、60歳以降も継続加入を申請して、40年の満額受給になるようにするのがよいでしょう。
老後のために運用したい気持ちはわかりますが、老後資金のベースとなる部分は堅実に準備することが大切になります。
堅実な老後資金対策働は“働いて収入を得る”
現在加入中の保険ですが、もしかしたら生命保険会社にすすめられ、個人年金保険に加入しているかもしれません。
個人年金保険については、現在は利回りが非常に低く、加入する妙味はほとんどありません。
それよりも、公的な年金である国民年金、準公的な年金である国民年金基金や付加年金などで、堅実に老後資金を準備されるべきでしょう。
そして、少々酷な回答になるかもしれませんが、働けるうちはなるべく働いて、収入を得るようにされてください。
なぜなら、収入を得るのは最も堅実な老後資金対策であるからです。
そして、そのために健康にも留意することを忘れないで、頑張ってください。