はじめに

うっかりハマる落とし穴(1)「値引き交渉」

この着物を試着したまま、立ちっぱなしは疲れるだろうからと、イスに座らせます。鏡の前なので、着物姿の自分を見ながら、座り姿もチェックするよう促されます。座って落ち着いた状況を作った上で、金額交渉が始まります。

「もしこれがいくらだったら購入しますか」この質問で客の懐具合を探ります。次に“定価”を提示します。200万円。当然ながら「はい、買います」と即答できる金額ではありません。

ここから始まるのが値引きです。一気に半額を提示されます。とはいえ、それでも100万円もなかなか「はい」とは言い難いでしょう。「今日この場で決定してくれるなら」という前提でもう一声、80万円まで下がります。この短時間で120万円が消えていき、残りでよいというわけです。

「ぜひこの着物をあなたに着てほしいから」「思い切って本当に頑張りました」と汗をかきながら話すスタッフの姿に客も打たれていきます。

うっかりハマる落とし穴(2)「月々の分割払い」

社会人になりたての人だと、これから働きつづけて毎月の収入は入ってきても、まだ貯金がない状態です。ここで提示されるのが月々の分割払いです。「月々3万円ならどうでしょうか」

一度に80万円を支払うのは厳しいかもしれませんが、3万円という比較的手近な金額を提示されるとより一層「支払えるかも」と思うことでしょう。

しかしここで手数料と支払い完了時期に注意を払う必要があります。クレジットカードのリボ払いでは、手数料率が15%です。もし80万円の着物を購入する場合、消費税を入れると元々の金額は88万円となります。

月々の支払金額を3万円に設定すると支払い回数は30回、つまり支払いが完了するのは2年半後です。さらにその合計金額は103万円にも及び、手数料を約15万円ほど支払うこととなります。

落とし穴にハマるのを防ぐには

その場では数々の誉め言葉や素敵な着物に気分が高揚し、冷静な判断ができません。「その場では決められない」と一旦持ち帰り、頭を冷やした状態でもう一度検討しましょう。

リボ払いで2年半も支払い続けることができるか、総額はいくらか、なによりも最初からその値段で売りに出ていても買ったかどうか、じっくり考えてみてください。

もしその場で決断を求められた場合、クーリングオフができるのかどうか、何日以内なら可能か、全額戻るのか、書面で確認できるものをもらっておきましょう。

契約を急がせるということは、それだけ「何か理由がある」ということです。あなたの大切なお金を守るためにも、断る勇気を振り絞って伝えましょう。実際、その着物が売れてしまうことはそうそうありません。売れてしまっていたら「ご縁がなかった」と諦めることも肝心です。

出典

展示会商法とは
大阪市消費者センター

リボ払いシミュレーション
日本クレジット協会

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