はじめに
米国株の世界シェアに関する予測
次に、マクロ的な観点から、国際分散投資について見てみましょう。ジェレミー・シーゲル氏は『株式投資 第4版』で、「投資対象を米国株だけに絞るのは、投資家にとって危険な選択である」と警鐘を鳴らしています。その理由を、「米国株の世界シェアは、今世紀の半ばまでに18%以下に低下してしまうから」としています。
2022年2月現在で、世界の株式時価総額比率でアメリカ株は44%を占めます。戦後は約9割、70年代は世界の3分の2に、2000年代には3割ほどになり、この10年間で44%まで盛り返しました。これが2050年には2割以下にまで下がるとシーゲル氏は言っているのです。
この数字は浮動株調整をおこなっていない数字なので、我々が実際に購入できる浮動株調整をおこなえばもう少しアメリカの比率は高まりますが、それでも世界シェアの半分をきると考えるのが妥当ではないでしょうか。だとすれば、米国株だけを保有するというのは、世界の大半を無視することになります。
そこまで米国のシェアが長期的に低下すると予測されるのには、人口とGDPの予測が関わっています。
現在、人口が世界最大の中国ですが、10年以内にピークアウトを迎えて減少に転じ、2030年頃にはインドが世界一になる見込みです。インドは現在の13億人の人口の約半数が25歳未満の若者です。この大量の若年層の影響で、世界の生産と消費を支える大国になると予測されています。
総人口における生産年齢人口の比率では、2050年にはアメリカは61 .1%、中国は高齢化が進んで59.8%と低下するのに対し、インドは67.8%と高い比率を保つと予測されています(独立行政法人 労働政策研究・研修機構「データブック国際労働比較2022」より)。
次にGDPの予測を見ていきましょう。PwC(プライスウォーターハウスクーパース)の調査レポートでは、2050年には中国が約50兆米ドル、アメリカが34兆米ドル、インドが28兆米ドルで、飛び抜けた3大経済大国になると予測されています。
それでは、成長「率」はというと、下記の表にある通りインド(GDP予測3位)は年率平均で7.7%、インドネシア(GDP予測4位)は6.2%、サウジアラビア(GDP予測14位)は5.1%、ナイジェリア(GDP予測15位)は6.2%、エジプト(GDP予測18位)は6.6%、パキスタン(GDP予測19位)は7.0%と、新興国の発展は目覚ましいとされています。
一方、アメリカ(GDP予測2位)は年率平均で1.8%、日本(GDP予測5位)は年率平均で1.1%、ドイツ(GDP予測7位)は年率平均で1.7%、イギリス(GDP予測9位)は年率平均で2.1%と、現在の先進国は低成長です。
GDPの成長と、株式投資のリターンは必ずしも一致しません。しかし、20年や30年の成長を見越すのであれば、新興国の成長を無視するのは大きな機会損失になる恐れがあります。
とはいえ、新興国にはさまざまなリスクもあります。インドはいまだにカースト制度が残り、アフリカには宗教問題や民族問題があります。そのようなことも踏まえると、集中投資をするのは怖いというのが正直なところでしょう。そうなると、全世界に分散し、世界経済全体のリターンを享受することが最善と考えられます。