はじめに
リセッションについては?
全米経済研究所(NBER)は「2四半期連続のマイナス成長」をもはやリセッションの定義としていません。
NBERのウエブサイトにある米国の景気循環のグラフを見ると、コロナ・パンデミックが発生した2020年春は、わずか2カ月の期間をリセッションと認定しています。このグラフには失業率が挿入されていますが、過去のいずれの景気後退期も必ず失業率の大幅な上昇を伴っています。NBERがリセッション時期を示すこのグラフに、わざわざ挿入した一つの経済指標が失業率です。
これが示唆することは、NBERが景気判定で重視するものは失業率だということで、リセッション=景気後退というのは、すなわち大不況であり、わかりやすい事象は、失業者が街にあふれているかどうか、ということなのでしょう。
そういう観点でいえば、今後、リセッションは起こらないでしょう。すなわちNBERがリセッションと認定するような失業率の急上昇は起きないということです。なぜならコロナで変わった働き方はそう簡単に戻りません。早期退職などで労働市場から退出してしまった人が多く、彼らの一部は戻ってきません。労働参加率も少しずつしか改善しないでしょう。よって人手不足感は続きます。それが失業率の急上昇が起きない理由です。
そうはいっても求人件数はピークアウト、イニシャルクレイム(米国で新規に失業保険給付が申請された件数)もじわりと増え、労働市場の最高の時期は過ぎました。これから緩やかに悪化していきます。つまり過熱はないが、一気にも悪くならない。熱すぎもせず冷めすぎもしないゴルディロックスの状況です。
インフレのいちばん厳しいところは過ぎたものの、高止まりが続きます。利上げも同様です。つまり最悪ではないものの、最高の状態でもなく、マーケットにとっては、これがいちばんComfortableな状況です。
なぜなら、最高の状態というのは、あとは悪くなるだけだからです。最悪期は抜けて、「お楽しみはこれから、まだ先にある」というのがいちばん、いい時だからです。