はじめに
欧州の厳しい状況を反映して外国為替市場ではユーロ安が加速し、20年ぶりに1ユーロ=1ドルのパリティ(等価)割れとなっています。ユーロ安は本来、ドイツなどの輸出立国にとって追い風になるはずですが、エネルギーなどの輸入インフレの弊害のほうが輸出増加の恩恵を打ち消して余りある状況、すなわち「悪いユーロ安」と受け止められています。
こうなると、もはや欧州だけの問題ではありません。世界中の中央銀行がインフレ抑制のため強固な姿勢で利上げに臨む中、日銀だけが金融緩和を続けていることから円安の流れが続いてきましたが、そこにユーロ安も加わって、外国為替市場では「ドル1強」がますます鮮明になっています。主要通貨に対するドルの強さを示す「ドル指数(実効為替レート)」は29日、20年ぶりの高水準をつけました。ドル高は米国の企業業績にとって逆風です。海外で大規模な事業を展開するグローバル企業の売上高はドル高によって目減りします。マイクロソフト、IBM、ネットフリックス、ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)、フィリップ・モリス、セールスフォースなどが下方修正を発表しています。
欧州のエネルギー危機はユーロ安を通じて米国のグローバル企業の業績の重石となり、ひいては米国株式市場全体の不安要素となります。投資家の立場からはインフレ動向や中央銀行の政策に加えて、欧州のエネルギー問題から目が離せない展開が続きます。