はじめに

外国人投資家は原発再稼働に関心

岸田首相による2022年4月8日の「電力逼迫を回避するため、再生可能エネルギーや原子力など脱炭素の効果の高い電源を最大限活用」するとの発言は、従来の姿勢から大きく変わったものとは思えませんでしたが、東京電力ホールディングスなど電力株が大きく上昇したほか、日本製鋼所などの原発関連株も上昇しました。

岸田首相は2021年10月の衆議院解散に伴う記者会見で、「再エネ1本足打法では安定供給や価格の問題に十分対応できない。原子力も1つの選択肢」と語っていました。岸田政権の経済政策の司令塔である山際大志郎経済再生担当相も、「菅政権のエネルギー政策が再エネを強調する『グリーン』だったのに対し、岸田政権のエネルギー政策は『クリーン』(再エネ+原子力)だ」と説明していました。

岸田首相の発言は、「安全が確認された」という形容詞がミソであり、現時点で、

1.原発を緊急再稼働する
2.東日本大震災以降に厳しくなった原子力規制委員会の審査基準を緩和する
3.原発を新設する

といった話は出ていません(編注: 8月24日に原発新増設などを含めた具体策のとりまとめを検討する旨が報道されました)。

原発再稼働に対する自民党内の意見も分かれており、内閣府の「『クリーンエネルギー戦略』に関する有識者懇談会」での議論も遅れています。

経済産業省の産業構造審議会・グリーントランスフォーメーション推進小委員会2022年3月の会合で、日本は大震災までの蓄積により、年1兆円規模の原子力産業のサプライチェーンが構築されたものの、いまは原子力技術・人材が継承の危機にあるとの認識が示されました。

ウクライナ戦争の後、英仏など欧州でも原発を新設する動きが出ています。日本は国際比較で電力料金が高いので、電力料金の上昇が続くと、日本企業の国際競争力が低下します。岸田首相が原発再稼働の加速を決断すれば、外国人投資家から歓迎されるでしょう。

日本株を動かす 外国人投資家の思考法と投資戦略

著者:菊地正俊

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(この記事は日本実業出版社からの転載です)

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