はじめに

費用を取るか、負担減を取るか

ーー自宅介護と介護施設、それぞれのメリット・デメリットってあるんですか?

それぞれありますよね。自宅介護のメリットは、やはり住み慣れた環境で生活できることですよね。

コスト面においても、当然抑えられます。ただ、バリアフリーにしたり、手すりを設置したりなど最低限の出費は必要になります。

デメリットとしては、家族の負担がかかることですよね。介護状態になると、色々とやることがあるんですが、プロのような行き届いた介護はなかなかできないわけです。

それから、課題の1つだなと思っているのは、自宅で介護することになった場合、介護離職をされる方が年間5万人~10万人いらっしゃるんですよ。

フルタイムじゃない仕事に就かれる方もいらっしゃるんですが、完全に辞めてしまう方も多いんです。

そうすると生活のすべてが介護だけになってしまい、自宅から出られず、社会との接点がなくなってしまうこともあるんです。

最低限の経済基盤を維持するという意味でも離職は避け、借りられるところは介護のプロの手を借りるのがよいのではないしょうか。

ーーそうですね、シビアな問題ですね。では、介護施設側のデメリットは?

やっぱり価格が安い「特別養護老人ホーム」がなかなか入居できない状態ですし、自宅で介護される場合よりも費用がかかることですよね。

また、全く新しい環境に住まいを移すというのは心理的障壁が高い方は多いんじゃないかなと思います。あと、人によっては施設内の人間関係があんまり上手くいかない方も中にはいらっしゃるので、それもやっぱり見学とで雰囲気を見る必要があるかなと思います。

一方で、メリットとしては、家族の負担を減らせることですよね。精神的にも身体的にも負担を減らせます。あとは、緊急で何かあった時も、自宅にいるよりは安心かなっていうのもあります。

親の介護経験者は、早めに検討する傾向

ーー介護サービスについては、何歳ごろから考え始めるのが良いのでしょうか?

末期がんなどの特定疾病の方を除いて、大半の方は介護サービスを受けられるのが65歳からなんですよ。なので、多くの方は、年金を貰うタイミングくらいで、どうしようかと考え始めるのかなと思います。

現時点では介護が必要になってから入る方が多く、老人ホームに入居される方の平均年齢が大体80歳くらいなんですが、最近では、なにか不測の事態があっても大丈夫なように、元気なうちから入居されるという方も多くなってきている印象です。

あと、親の介護を見てきた方たちは自分が大変だった記憶があるので、自分の子供たちにはあんまり迷惑かけたくないという理由で早めに入居を考える方が増えてきているのかなと。

ーー介護経験がある方は、やはり現実的に考えるのですね。

施設に入ることに拒否感を持たれている方もまだまだ多いのですが、自分で介護をしたことがある方ほど、逆に介護が必要な立場になった時は、親族に迷惑をかけたくないとか、家族じゃない人に介護されたいと思ったりもされるようですね。

ーーこれからは高齢者の方も増えて、ますます介護問題が難しくなってきますね。

そうですね。昨年、65歳以上の高齢者の数は25%を超えました。高齢者は2042年まで増え続ける見込みなんですよ。その頃には、全人口の35%くらいになると言われています。

特に「子どもは東京にいて、親は地元にいる」という方は、家族で介護をするのはなかなか難しいところがありますね。

これからの日本全体の課題でもありますが、安心して老後を過ごすために、自分や自分の家族はどうするかというのは、早めに考えておいて損はないと思います。

ーー最後に、賢く介護サービスを選ぶには何が大事になりますか?

やっぱり介護って、どんな制度があるかとか、どうやって選ぶかが分かりにくいんですよ。調べてみても情報が少なかったりバラバラだったりします。

また、頻繁に制度が変わったりもしていますので、どんどん情報収集をして頂きたいと思います。知っていると知らないのでは全然違ってきますので。

色んな施設の情報を見て、本当に自分に合ったところを探してもらいたいと思います。

(ライター:千昌斗)

※初回公開日:2015年5月1日

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