はじめに

期待できない協調介入

問題は、このドル売り・円買い介入がどれほどの効果を持つのかということです。

過去、日本の円買い介入が成功した代表例に、1985年のプラザ合意があります。当時、双子の赤字に悩んでいた米国で反日ムードが強まったことから、政府・日銀はドル高是正を目標にしたドル売り介入を行いました。

ドル売り介入すれば、必然的に円買い介入したのと同じことになります。これによって、プラザ合意前は1ドル=240円前後だったドル/円レートが、1988年には1ドル=120円台になったのです。

なぜ、ここまでプラザ合意における円買い介入が成功したのかというと、まず米国がドル安を望んでいたことが大きいと考えられます。それに加えて、プラザ合意後の為替介入は、日本だけでなくイギリスや当時の西ドイツ、フランスといった、プラザ合意を受け入れた各国による協調介入だったことも、成功の要因として挙げられます。

では、今回のドル売り・円買い介入はどうでしょうか。

まず米国政府がドル安を望むのかというと、それはないと思われます。なぜならドル安は米国にとってインフレ要因であり、そのインフレの火種を消すために、FRBが必死になって金融引き締め政策を行っているからです。それは他の国も同様です。つまり今回のドル売り・円買い介入において、他国との協調介入は期待できず、日本政府・日銀による単独介入にならざるを得ないため、介入効果も限られると思われます。

自国通貨買い介入には限界がある

もうひとつ大きな問題があります。それは、自国通貨買い介入は基本的に不利だということです。

自国通貨である円を買う介入を行う場合は、政府が手持ちのドルを売って、円を買う流れになります。そして、このオペレーションを実施するために必要なドル資金は、円売り介入で外貨準備に蓄積されたドル資金が用いられます。

2022年8月現在、日本の外貨準備高は1兆2920億7200万ドルあります。1ドル=145円で計算すると、約187兆3400億円です。確かに、一個人ベースで考えればとてつもなく巨額な資金ですが、どれだけ頑張ったとしても、約187兆3400億円以上のドルを売ることは出来ないのです。つまり自国通貨買い介入は、どこかで限界を迎えます。
 
そこを投機筋に見透かされると、円買い介入によって一時的に円安に歯止めがかかったかのように見えますが、再び円安が走り出す可能性は十分に考えられます。今後、2度目、3度目の円買い介入が行われるかどうかは定かでありませんが、それが仮にあったとして、一時的に円高が進んだら、短期の円安を狙ってFXの取引をする人たちにとっては、絶好のドル買いのチャンスかも知れません。

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