はじめに

iDeCoは、税制優遇を受けながら老後資金を効率的に作る仕組みなので、長い年月をかけコツコツ積立を継続するのが王道です。しかし実際には掛金の拠出が困難な時もあるでしょう。

今回は、iDeCoの掛金拠出が難しい時の3つの対処法を解説します。


毎月の掛金の額を減額する

iDeCoは年に1回、掛金の金額を変更することができます。例えば、現在の掛金が月2万円で拠出が厳しくなったといという場合、最低掛金額である5,000円まで積立金額を下げることができます。月5,000円ということは、一日あたり約167円ですから、ムリのない金額と思われる方も多いのではないでしょうか?

iDeCoは勤め先の企業年金の有無や公務員や自営業などの職業等によって、積立てられる金額に上限が設定されていますが、下限は一律5,000円です。それ以上であれば、1,000円単位で自由に金額を設定することができます。

掛金の上限金額は年単位で管理されているため、それに併せて変更届けも提出します。1月から12月の掛金合計額が年の拠出限度額を超えないかどうかのチェックをするため、届け出の期日は、12月から翌11月までの間で1回のみとなります。

手続きは、運営管理機関で行います。「加入者掛金変更届」を運営管理機関のサイトからダウンロードする、あるいはコールセンターから取り寄せます。

最低掛金額であっても、つみたてを継続する税制メリットは主に2つあります。所得控除と退職所得控除です。

所得控除とは毎年の掛金が課税対象から外れることで、節税ができるというメリットです。年間6万円の積立であっても、所得税の最低税率5%と住民税10%分、合計9,000円は税のメリットが受けられます。もちろん所得が高い方はそれ以上のメリットが受けられます。

退職所得控除とは、受け取りの際の「税金がかからない枠」のことです。これは加入期間、つまり掛金を拠出している期間で計算します。加入期間が20年までは1年あたり40万円、20年を超えると1年あたり70万円です。例えば最低掛金であっても25年間積立を継続すると「(20年 × 40万円) + (5年 × 70万円)」となり、1,150万円の非課税枠を作れるということです。

年単位拠出に変更する

毎月の掛金を拠出するのは大変だけれど、ボーナス月の積立は継続したいという場合は、年単位拠出への変更が可能です。前述のようにiDeCoは掛金拠出限度額を年単位で管理しているため、1年間で6万円(最低掛金5,000円 × 12ヵ月分)以上であれば年に1回の拠出も認められます。

例えば、掛金の拠出を毎月ではなく年に2回とする場合、6月と12月のボーナス月に引き落とされる金額をそれぞれ30,000円とし、その他の月を0円とすることもできます。ボーナスを貯蓄に充てているという方の場合は、月々よりも管理がしやすいかもしれません。

iDeCo独特の言い回しなのですが、掛金納付月と実際に指定の銀行口座から引き落としされる月は1ヵ月ずれます。年単位拠出の申し出をする際に提出する「加入者月別掛金額登録・変更届」には、「引き落とし日」の記載の下に「○月分」と併記されています。iDeCoの掛金の引き落とし日は毎月26日ですが、特に給与の支払い日の関係で年単位の納付月を調整したい場合は、届を出す際に注意をしましょう。

年単位拠出にしたとしても、最低掛金は同額なので、一見すると毎月の掛金を5,000円にするのと変わりはないように見えますが、拠出回数が少なくなることにより、国民年金基金に支払う1回105円の手数料を節約することができます。年に12回拠出すると年間1,260円ですが、1回であれば105円で済みます。

例えば、値動きのある投資信託で運用せずに元本確保型商品しか選ばない、といった方であれば、購入時期を分散させ相場の変動リスクを低減させる「ドルコスト平均法」を考慮する必要はありませんから、支払い手数料を下げるために年間の拠出回数を減らすこともメリットと考えられます。

ただし、年単位拠出といっても「あるとき払い」や「駆け込み払い」は認められず、事前に申し出が必要です。従って、今後の積立スケジュールを見直ししたい場合に検討するオプションと考えると良いでしょう。

なお、年単位拠出にしても、1年間の掛金全額が所得控除になりますから、拠出時の税メリットについては不利益となりません。また退職所得控除を計算する際も、1年は1年と計算するので、これも不利益にはなりません。

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