はじめに
ポイントは指示を出すときの言葉選び
同じ内容でも、言葉遣いで印象は変わる
指示を出すときに押さえておきたいのは、「伝わる言葉の選び方」です。「ものの言い方」「言い回し」と置き換えてもいいでしょう。
自分では何気なく言った言葉でも、言葉の選び方で印象は異なります。部下の気持ちと反応も、大きく変わるということです。
英語では「Sit down!」「Call me!」といった言い方は命令形ですが、前か後ろに「Please」をつけるだけで、依頼形へと変化します。「Please」のひと言を加えるだけで、相手が受け入れやすくなるわけですね。
全体を「Could you sit down, please?」のように言い換えれば、より丁寧な言い回しとなり、相手にこちらの要望を聞き入れてもらいやすくなるでしょう。内容は同じでも言葉選びで、その印象はぐっと変化するのです。
部下の個性に合わせて、言葉を変えるのが理想
どのように伝えたら部下が正しく受け取り、気持ちよく従うことができるのか。
常にそのことを考えながら、部下の性格やその場の状況に合わせて、言葉を使い分けましょう。ここがキャリアを積んだ人間力のあるあなたの腕、すなわちマナー力の見せ所です。
そのように驚いたり、気分を害した方もいらっしゃるかもしれませんが、部下を正しく導くためには、上司はそこまで気を遣わなければいけないのです。
そうした配慮ができる上司が、部下たちを魔法にかけるがごとく、指示通りに動かせることができます。そうして経験を重ねることで、部下も成長してくれて、あなたが注意や忠告をする場面も減ってきます。そのほうがあなたの楽になりますよね。上司と部下がWIN-WINの関係を築くために、部下への気配りや気遣いは必須なのです。
部下が自分から動く言葉選びのポイント
指示を出すときに命令形を使わない
あなたが若い頃に上司から、「あれをしろ」「これをして」と指示を出されたら、どのような気持ちになったでしょうか?
おそらくは上から目線の指示の出し方に、反発心を覚えたこともあったのではないでしょうか。一方、「~してください」といった丁寧語なら、前述の命令形よりは柔らかい印象になります。しかし、この言い方も一方的に伝えているだけなので、マナー的には命令形とみなすのです。相変わらず、部下には疑問を挟む余地がなく、相手の意向を無視していることになるわけです。
命令形は部下に好まれない――。そのように強く心に刻んでおきましょう。命令形は反感を買うきっかけとなり、円滑なコミュニケーションを阻害します。
部下への指示は「お願い形」が基本
常に相手の立場にたって、相手の意向をうかがうのがマナー。部下に指示を出すのであれば、次のような言い方がふさわしいでしょう。
部下に仕事をお願いする言い方に、釈然としない人もいるかもしれません。しかし、それは不要なプライドです。素敵な愛され50 代は、このような考え方とはおさらばしましょう。
実るほど頭を垂れる稲穂かな。お願いするように指示を出すことで、部下は快く指示に従い、期待通りに動いてくれるでしょう。
お願い形で指示を出す2つのメリット
お願いするように指示を出すことには、2つの大きなメリットがあります。
1つ目は、相手を尊重する謙虚な姿勢が、さりげなく部下に伝わること。部下に好感を持ってもらえるわけです。
2つ目のメリットは、部下に「イエスかノーか」の選択権を与えていることです。
もちろん、「~してもらえないかな?」といった言い回しでも、上司からの指示に変わりはありません。従わない部下はまずいないでしょう。
それでも選択権が与えられたことで、部下の心には余裕が生まれます。それはあなたに対するプラスの感情につながります。お願いするような言い方をされれば、部下側も、事前にわかっていない部分がたずねやすくなり、ミスも減るでしょう。
使い勝手のいい「クッション言葉」
お願い形のほかにもう1つ、指示全体の印象を大きく変えて、あなたへの好感度を高める言葉遣いがあります。それが「クッション言葉」です。
クッション言葉とは本題の前に、相手をおもんぱかる気持ちを伝える言葉のことです。お願い形と組み合わせると、次のような言い換えができます。
クッション言葉が添えられたことにも、部下はあなたの気遣いを感じます。
より一層、あなたへの信頼を高めることでしょう。123 ページでお伝えしたように、部下の名前を呼びながらだと、さらに効果は高まります。