はじめに

利上げの停止で景気後退のリスクは低くなるか

もうひとつの株高の背景は、欧米でのインフレ鈍化で利上げ停止の観測が高まっていることです。米国では消費者物価指数(CPI)、卸売物価指数(PPI)ともに鈍化傾向が鮮明になっています。実際の物価が落ち着いてきたことから、FRBが重視するミシガン大学消費者信頼感指数でも、1年先のインフレ期待が4.0%と前月から0.4ポイントも大きく低下しました。賃金インフレのほうも伸びが鈍化しています。雇用統計では平均時給の上昇率が低下し、アトランタ連銀が算出する賃金トラッカーの上昇率も鈍化傾向が目立ってきました。

こうしたことから米連邦準備理事会(FRB)が1月31日~2月1日に開く米連邦公開市場委員会(FOMC)で、利上げ幅を通常の0.25%に戻すという観測が高まっています。FRB高官らが対外的な発信を控えるブラックアウト期間に入る直前に、ウォラー理事は「0.25%の利上げを希望する」と述べました。金利先物市場の動向から利上げ確率を算出するFED Watchでは0.25%の利上げの織り込みが99%超となっています。

市場の予想は次の3月会合まで0.25%の利上げを続け、政策金利を4.75~5.0%にするというものですが、そこで利上げが一旦、停止になるとの見方が主流となってきました。つまり、政策金利の到達点が想定以上に高くなるリスクは低くなってきたということです。

こうなると景気後退のリスクも低くなります。景気後退に陥ると見られている理由は、インフレが収まらないため中央銀行の利上げが長期化する、ということでしたが、その前提が崩れつつあります。

象徴的なのは欧州です。1月のユーロ圏の購買担当者景気指数(PMI)は総合で前月比0.9ポイント上昇し、50.2と好不況の境である50を上回りました。これでPMIは10月を底に3カ月連続の上昇です。

景況感改善の要因で大きいのはインフレの緩和期待です。記録的な暖冬で欧州のガス価格は急低下し、昨年11月末に比べると6割も安くなっています。こうしたことから12月のユーロ圏と英国の消費者物価指数の前年同月比はそれぞれ2カ月連続で前月を下回り、欧州でもインフレのピークアウト期待が出ています。

インフレの低下が景況感の改善につながるというのは、今後の重要なポイントのひとつです。欧州の場合は顕著な例ですが、今後同様のことが世界で起きるでしょう。株式投資には非常に好ましい環境になってくると思われます。

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