はじめに
年間で次のような取引をした場合を考えてみましょう。
(1)1月1日に1BTCを300万円で購入した
(2)4月1日に1BTCを400万円で購入した
(3)7月1日に1BTCを500万円で売却した
(4)10月1日に1BTCを200万円で購入した
移動平均法の場合、(3)の売却時には②の購入までで算出される取得原価で損益を計算します。すなわち(300万円+400万円)÷2=350万円が取得原価となり、500万円との差分の150万円が利益となります。
一方、総平均法の場合、(3)の売却時には①②④の購入分をまとめて算出される取得原価で損益を計算します。すなわち(300万円+400万円+200万円)÷3=300万円が取得原価となり、500万円との差分の200万円が利益となります。
このように移動平均法と総平均法では単年の実現利益に差額が生じることがありますが、将来にわたっては実現利益が一致します。この点から一度採用した計算方法は原則として3年間は変更が認められていません。
それぞれの計算方法については国税庁がホームページ上でエクセル形式の計算書を公開しています。総平均法については国内暗号資産取引所が発行する年間取引報告書を用いることで簡単に計算することができるため、これから暗号資産投資を始める方には損益計算の手間がかからない総平均法をおすすめします。
なお、暗号資産の税計算は取引の内容によって扱いが異なる場合があるため、国税庁のガイドラインを参照しながら計算方法に悩んだ際には税理士などに相談するようにしましょう。
暗号資産への課税方法が一部見直しに
最後に、今年の税制改正大綱に盛り込まれた暗号資産税制の改正内容について簡単に説明します。大きな変更点としては法人が保有している暗号資産への課税方法が一部見直されました。
現行では法人が暗号資産を保有していた場合、売却せずとも期末時点の評価額で利益が出ていれば課税されるというルールでした。この期末評価課税ルールでは暗号資産発行企業の税負担があまりに大きく、国内の暗号資産関連スタートアップが次々に拠点を海外へ移してしまうという問題がありました。
しかし今回の税制改正では、暗号資産発行企業の自社保有分については一定のルールで期末評価課税の対象外とすることが定められました。これによって国内においても独自の暗号資産を活用したビジネスが発展することが期待されます。
また、投資家にとって最も影響が大きい暗号資産取引の分離課税への変更については税制改正大綱に記載がありませんでしたが、暗号資産に対する政府の厳しい見方も和らぎつつあり、暗号資産取引が証券や為替と同様の扱いとなる日もそう遠くはないでしょう。