はじめに
噂で買って事実で売る
もう1つ、投資の世界では常識とされているものの、世間的には馴染みが薄い現象を紹介します。
なぜ株価が動くのか、なぜ株価は時として思った方向と逆にいくのか、理解しにくいと感じている方は少なくないと推測されます。それもそのはず、有名な相場格言に「噂で買って事実で売る」「強気相場は、悲観の中に生まれ、懐疑の中に育ち、楽観の中で成熟し、幸福感の中で消えていく」があります。
これらは事実として公表された際には「材料出尽くし」で売られてしまうとか、思惑や期待感によって相場は動きやすいということをあらわした格言です。日常生活のなかでは、不確定の段階に思惑で判断し、確定したら出尽くしというような経験はあまりないかもしれませんが、仕事やビジネスではよくあることです。
不変なのは、「買われすぎたものはいつかは売られ、売られすぎたものはいつかは買われる」ということです。好決算が期待された銘柄が、決算発表後に売られたり、マーケットの期待に届かず暴落したりするというようなことはよくありますし、逆もまたしかりです。
人はいまの状態が今後も続きやすいと考えがちですが、マーケットには「平均回帰」といって、チャートの移動平均線のような大まかな流れ(トレンド)から大きくかい離した動きが落ち着くと、そのトレンドへ戻ろうとする力が働きます。
生き残る知恵として役立てよう!
株式市場は実体経済の半年先をいく、と言われています。金融政策から相場サイクルを考えると、次のようなパターンがあり、それぞれのステージごとに強い業種(セクター)が移り変わりながらローテーションしていきます。
かつて、中国バブル(金融相場から業績相場)のピークから約2年後にはリーマン・ショック(逆金融相場から逆業績相場)が起こり、コロナショック(パンデミックによる供給制約・需要急減と、大幅金融緩和・巣ごもり消費急増による、K字回復を伴う突発的な金融相場)のボトムから約1年後の急回復(金融相場と業績相場)は目覚ましいものがありました。
投資の世界では常識でも、日常では非常識であったり、わかりにくいことが少なくありません。特に近年では様々な要因が複雑に絡み合い、明確に相場サイクルが現れないことも想定されるところでありますが、株式市場や金利などの動向をおおまかに把握しておくことで、資産運用の戦略を立てるヒントになると考えます。