はじめに
がまんに使っていた「自己資源」を有意義に使う
職場によっては、古いやり方を踏襲し、新しい提案は受けつけない雰囲気があったり、仕事の性質上、残業は免れなかったりすることもあり得ます。
しかし、そんな環境の中でも、アサーティブに自分の思いを伝え、自分の望む状況を実現している人がいるのも事実です。
限りある「自己資源」を、がまんに使うのはもったいないことです。自分が大切にしたいことに最大限の「自己資源」を使えるように、自分の気持ちを伝えていきましょう。
昇進を断り、家族との時間を選択
不動産会社のトップセールス常連だったある男性が、課長昇進を伝えられたときのことです。
彼は、部長が残念がる中で、その昇進を断りました。
不動産、特に住宅のセールスは、世の中の多くの人々が働いていない時間帯が最も多忙になる仕事です。それまではその仕事を十分やり遂げてきた彼でしたが、課長となると話は別。管理職になると、部下がその日の仕事を終えるまでは、全体を見届ける責任があります。土・日もより多く出勤する必要があることは経験上、よくわかっています。
そこで、自分の家庭の状況を話して、一社員としてはできても、管理職としての責任は果たせないことを理解してもらったのです。そして、その上で、自分の力が発揮できているその部署の仕事は続けたいとも伝えました。
彼は、がまんして昇進をあきらめたのではなく、家族のために自らの選択で、辞退を決めたのです。
彼は、その仕事が好きであり、能力を発揮していましたから、管理職の仕事も十分果たすことができるでしょう。しかし、自分自身の中にある「資源」を今、必要とされている2つの場に集中する道を選びました。
「資源」とは、単なる能力のことではなく、何かをやりたいと思う意思や情熱、自分の周りや会社のために貢献しようとする志も含まれます。
がまんするということは、自分の資源やエネルギーをやりたいことに使わず、がまんのために使ったり、どこかにため込んだりしていることかもしれません。
もし、管理職になることで家族への思いをがまんし、葛藤をもたらすとしたら、それは資源の抑え込みでしょう。
自己資源を何に使いたいかは、自分が一番よく知っているのではないでしょうか。