はじめに

ステーブルコインの今後は? 規制の動向と利用の広がりに注目

ステーブルコインは昨年5月にテラ社が発行するUSTの崩壊事件が起きてから規制強化の動きが続いています。米国ではパクソスの発行するバイナンス関連のステーブルコインBUSDの発行が停止されました。これを受けてバイナンスのCEOは米ドル以外のステーブルコインの発行を示唆するコメントを出しました。今では全体の9割近くが米ドル連動のものとなっていますが、米国の規制次第では暗号資産市場の米ドル依存体制に変化が起こるかもしれません。

また金融安定理事会(FSB)や国際通貨基金(IMF)、国際決済銀行(BIS)といった国際金融組織は共同でステーブルコインをはじめとする暗号資産規制の枠組みを議論しています。最近ではステーブルコインの裏付け資産状況を定期的に公開する動きも増えていますが、発行体に対する情報開示ルールが定められる可能性はあります。またステーブルコインを使ったマネーロンダリングのリスクも強く懸念されており、発行体だけでなく取引業者も含めて資金の流れを追うための対策が考えられるでしょう。

このようにステーブルコインに対する締め付けはありますが、用途が広がる動きもあります。大手決済Visaはステーブルコインを用いた決済インフラの構築に向けた研究を進めています。米国では既存のクレジットカードや決済アプリがステーブルコイン決済に対応するケースもあり、たとえばApple Payを通じてUSDCで決済できるような環境も少しずつ増えています。将来的にはステーブルコイン(暗号資産)と法定通貨で形態は違っても同じ通貨の価値として支払いできるようになるかもしれません。

ステーブルコインの利用先として新たに注目されているのがゲームあるいはメタバースです。仮想空間で流通するステーブルコインの価値が果たして法定通貨に連動するべきかはわかりませんが、仮想空間であっても何かを売買する際には価値が安定した決済通貨は必要でしょう。それが横断的に使えることが理想です。今ではステーブルコインの多くが分散型金融(DeFi)などの金融領域で取引されていますが、今後はインターネット上の非金融領域でも利用が増える可能性があります。

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