はじめに
3月初旬まで強烈に強い相場が続いた日本市場に、突如として襲ったのが米シリコンバレー銀行の破綻の報道でした。私もいくつかの金融危機を経験しましたが、今回はほぼ前触れもなく、銀行が破綻するという、前代未聞の出来事となりました。銀行の破綻としては、アメリカ史上過去2番目の規模です。
シリコンバレー銀行がなぜ破綻に至ったのか−−簡単に説明したいと思います。
シリコンバレー銀行が破綻に至った背景
シリコンバレー銀行は約40年の歴史を持ち、テクノロジーやヘルスケア業界に特化し、預金残高は全米で16位の銀行です。特にベンチャーキャピタルの企業が顧客となり、ここ数年で預金残高を急増させ、2018年の約4倍にあたる約27兆円の預金残高となっていました。
預金残高が急増した同行は、2022年から長期債を中心に投資を行いました。そうした折に、FRBによる繰り返しの利上げで煽りを受けました。この利上げは、インフレ懸念を背景に行われました。利上げによって企業の資金調達が上昇した事や、リストラ費用の増加などから預金資金を解約する企業が増加しました。
顧客の解約を受け、同行は運用していた長期債を売却せざるを得ない状況となりました。長期債を売却した事で、同行は2,400億円の損失を出す事になりました。その後、同行は公募増資などを検討しますが、株価が大幅安となった事を受け、増資も出来ない状況となり、不安が生じた預金者が相次いで解約を行った事で、同行が破綻となった経緯です。
冒頭でも書きましたが、今回の破綻は前代未聞の出来事のように感じます。私も長年、株式市場に携わり山一証券や三洋証券の倒産や、リーマン・ショックなど数々の金融破綻を経験しました。こうした金融不安の場合、数ヵ月前から話題に上り、株価も下落してくることが常でした。
しかし、今回のシリコンバレー銀行の破綻は前触れのような予兆が一切なく、同行の株価も270ドルで推移していました。今回の破綻の原因の一つは情報が速いSNSによる拡散とも言われ、即時性が表立った新しい時代のスタイルとも取れる破綻劇となりました。