はじめに
イーサリアムの上海アップグレードで何が変わるのか?
2023年4月執筆時点でイーサリアムのステーキングの参加者は約56万ノード(個人・企業含む)以上に増えており、彼らがネットワークに預け入れている資産額は約1800万ETH(約4兆3千億円)まで膨れ上がっています。イーサリアムは昨年にPoSへ移行した後も、取引検証者が新しく資産を預け入れることしかできませんでしたが、その将来性に対する期待からステーキングの規模を拡大し続けてきました。
そして今回の上海アップグレードでは、イーサリアムにロックされている大きな資産がようやく引き出しできるようになります。そこで取引検証者が取りうるオプションとして、32ETH以上を残してステーキングを継続する部分的な引き出しと、ステーキングを辞める全額引き出しがあります。いずれも資産の引き出しによってETHの売り圧が生じるだろうと懸念されています。
確かにビットコインのマイナーが報酬で得たBTCを法定通貨に一部換金しながら事業を継続しているように、イーサリアムについても取引検証者が手元の資金を確保するためにステーキング分のETHを一部売りに動くことはあるでしょう。上海アップグレードの直後はそれが顕著に現れて相場がネガティブに反応することはあるかもしれません。
しかし、ステーキングの参加者がETHを引き出せるようになったからと言って、彼らが一斉にETHを売り払って市場から撤退することは考えづらいです。それはイーサリアムの成長を見越した時にはブロックチェーンの取引検証者になることが、最も安定的かつ確実に利益を上げることができるからです。ビットコインのマイニングが取引所に並ぶ中核事業になっていることからもわかるでしょう。
最近ではイーサリアムをステーキングしながら、その同等分を別の取引にも利用できる流動性ステーキングというサービスも人気を集めています。その最大手であるリド(Lido)はイーサリアムのステーキング市場で最大のシェアを占めています。
上海アップグレードを無事通過することによって不透明感が解消され、むしろより多くの投資家がイーサリアムのステーキングに参加しやすくなるでしょう。それによってイーサリアムのネットワークの健全性も高まっていくことが期待されます。