はじめに
米国は構造的な人手不足が続いています。それを示すのが労働参加率です。労働参加率は緩やかに上昇していますが、それでもまだコロナ前の水準には戻っていません。
2月雇用動態調査(JOLTS)で非農業部門の求人件数が1年9カ月ぶりとなる1000万件割れとなりましたが、この1000万件という数字自体が異常に高いのです。確かに求人件数はピークアウトはしましたが、まだ1000万件近い求人があるという事実は見逃せません。
人員削減が進んでも失業者が増えないという理由は、おそらく解雇されても次の就職先がすぐ見つかるからなのでしょう。構造的な人手不足が続く以上、失業率が急に跳ね上がることは考えにくいのです。失業率が上昇しなければ深刻な景気後退とは言えません。
そうは言っても労働市場の過熱感が薄らいできたのは事実です。求人もピークアウトし、労働市場に緩やかながら働き手が戻っています。だからこそ、賃金上昇もピークアウトしています。物価上昇率も同様の傾向です。
景気の減速感は強まるが…
改めてみると、やはりコロナ禍による人々の行動変容が供給制約や過剰需要を生み、それがインフレの要因の大半だった と思われます。そのコロナが収束に向かえば、経済の歪みも是正されインフレの問題も落ち着きへと向かうのは当然と思われます。これらのことから次回、5月初旬のFOMCで25bpsの利上げがなされた後は、しばらく利上げは停止されると考えます。
利上げが停止されても、5%を超える高い水準の政策金利が続くことになりますから、米国景気は一段と減速感を強めるでしょう。しかし上述の通り、米国の労働市場の構造問題はしばらく続きますから、失業率が急激に上昇するような景気後退には陥らず、マイルドな景気減速程度で済むでしょう。つまりはソフトランディング・シナリオが有力だと考えます。