はじめに
民間の保険で“補う”という考え方が大切
塚越:実は、日本の公的保険は健康保険だけではないんです。
有野:えっ、ほかにもあるんですか?
塚越:たとえば、「高額療養費制度」。病院や薬局の窓口で支払う医療費が1ヵ月で上限額を超えた場合、超えた分の医療費が払い戻される制度です。
有野:へぇ、知らんかった。生命保険だけじゃなくって、健康保険も一緒に使えるわけですよね。
塚越:手術や通院などにかかる医療費の家計負担が大きくなりすぎないようにするのが目的で、もちろん国民健康保険でも社会保険(健康保険)でも適用されます。1ヵ月の負担限度額は、住民税非課税の方だと35,400円。年収が約370万円~770万円だと、「80,100円 + (医療費 - 267,000円)×1%」など、年収によって上限の額が定められています。ただし、個室利用などで発生する「差額ベッド代」は対象外なので要注意です。
※画像:厚生労働省「高額療養費制度を利用されるみなさまへ」より引用
有野:確かに公的保険で贅沢しちゃうのは、なんか違いますもんね。そのあたりは、民間の保険でカバーすべき、ってことか。
塚越:そうなんです。その「公的な保険でカバーされている以外の部分は民間で補う」という考えが大切なんですが、意外とそれをできていない方が多いんです。
有野:なるほど。これまでは「民間の保険で補う」っていう考えじゃなくて、「保険やし、なんかあった時のために入っとったほうがええやろ」くらいの感覚でした。でも、「高額療養費制度」ていうのがあるんなら、そこも考慮しないともったいないですね。
塚越:ほかにも、業務外の病気やケガで会社を休まざるを得なくなり、お給料がもらえない場合に支給される「傷病手当金」や、被保険者が亡くなったり、障害を抱えてしまった場合には、「遺族年金」や「障害年金」が支給されます。ポイントは、日本では公的保険や公的年金の仕組みによって、かなり広い範囲がカバーされている点なんです。それを知らずに、民間の保険に頼ろうとしてしまうと、二重で保険料を支払っていることになるんですよ。
有野:その休む時に支給される「傷病手当金」っていうのも、公的な保険なんですか?
塚越:はい、公的な保険です。
有野:僕は病気以外やと、アレルギーが出た時くらいしか病院に行かへんし、健康保険を使ってないと、なんか損してる気分になるなぁ。もし、民間の生命保険に入っていれば、公的と民間の両方から保険金をもらえるんですよね?
塚越:はい、当然もらえます。ただ、すでに日本の皆さんは民間の保険に加入しなくても、これだけの保険に加入しているわけなんですよ。公的な保険がカバーしている範囲を知らずに民間の保険に加入すると、「二重払い」になる可能性があるわけです。
有野:「二重払い」はもったいない! でも先生、どうしても保険屋のおじさんに勧められると、「病気で入院して落ち込んでる時にいっぱいもらえた方が気分が上がるかも」って気持ちで入ってしまうんですよ。
塚越:保険屋さんは、やはり保険を売るのが商売。有野さんのように経済的に余裕がある方はいいかもしれませんし、個々の事情による部分はあります。ただ、公的な保険がカバーしているのを知らず、民間の保険に加入して経済的に苦しくなってしまうのは違いますよ、ということです。
有野:ここに来る先生みんな、僕が金持ちって前提で話を進めはるんですけど、思ってはるより持ってないかもしれませんよ(笑)
塚越:あ、すみません(笑) 平均的なご家庭よりは経済的に余裕があるというイメージは確かにありますね。
有野:有り難いイメージですね(笑) でも、子どもの頃はお隣さんにお米借りに行ったり、調味料返しに行ったりしてましたよ。あ、そうや! 今回の保険の授業を聞いて、どうしても先生に伺いたいことがあるんですけど。
塚越:何ですか?
有野:僕の好きなゲームなんですけど、コンティニューのないテレビゲームで公的な保険ってあります? 無くなった残機が増やせるような便利なゲームキャラの保険!
塚越:ゲームに公的保険はないですね(笑)
有野:ですよね。今度の授業の民間の保険に期待します!
次回(5月16日配信予定)は「民間の保険の種類とメリット・デメリット」について聞いていきます。
2時間目:よゐこ有野「がん保険は新しいのに入り直したほうがいいんでしょ?」お金の専門家が指摘する問題点とは
3時間目:保険でよくある勘違い、収入全てを賄うのは間違い?よゐこ有野「考えが甘過ぎた」
4時間目:学資保険、子どもが生まれたら入るべき?よゐこ有野「意味ないやんか」
有野晋哉
1972年2月25日生まれ。大阪府出身。テレビやラジオ、CM、雑誌の連載などマルチに活躍。コンビで公式YouTube「よゐこチャンネル」も開設しており、幅広い世代から支持を得ている。自身が50歳を迎えた2022年に、お金にまつわる知識の大切さに目覚め、日々勉強中。
塚越菜々子
CFP・1級ファイナンシャル・プランニング技能士。税理士事務所に15年間勤務し、500件を超える企業や個人の財務経理に携わる。2017年に独立後、2,600人の家計や資産運用のサポートを行いながら、SNSやYoutube(登録者数8万人)で身近なお金について、専門的なことを噛み砕いて発信。日本テレビZIP、テレビ東京ワールドビジネスサテライトなどメディア出演多数。著書『書けば貯まる!共働きにピッタリな一生モノの家計管理』(翔泳社)
ライター:新井奈央