はじめに

現金化に備えて、少しずつ利益確定をしながら元本確保型商品にまとめたい

58歳のサトウさんは、60歳になったら企業型確定拠出年金の加入資格を失うこともあり、いったん全額を老齢給付として受け取ろうと考えています。幸い運用期間が長かったこともあり、資産は増えていますので、利益が出ている投資信託を順番に売却しながら現金化に備えたいと思っています。

サトウさんの現在の資産状況を見ると、投資信託Fが30%のプラス、投資信託Gが5%のプラス、投資信託Hが2%のマイナスとなっています。この状況を見てサトウさんは、積立の部分は今まで通り投資信託F、G、Hで継続したいが、投資信託Fについてはせっかくの利益なので、いったん確定をしておきたいと思われました。

次月以降の買い付けについては変更なしですから、行うべき手続きはスイッチングのみとなります。では、まずはマイページにログインをします。実はサトウさん、IDとパスワードを忘れてしまっていたので、会社に相談をして再発行の手続きしていました。再発行の手続きには日数がかかりますから、ID・パスワードの管理はしっかり行いたいところです。

「スイッチング」のタブを開くと、現在保有中の商品一覧が出てきます。ここでサトウさんは投資信託Fをチェックし、一部売却を選び、売却したい金額の口数を指定します。その後、定期預金を選び購入100%と指定すれば、完了です。

もしサトウさんが、少しずつリスク商品を減らして行きたいということであれば、配分変更で次月から投資信託Fの買い付けをやめ、その分で定期預金の買い付け行う指示をし、かつスイッチングで投資信託Fを全部売却し、その資金100%で定期預金を購入するということもできます。

サトウさんの注意点は、確定拠出年金だけを見るのではなく、定年後のキャッシュフローを見据えた計画も必要という点です。というのも、確定拠出年金は最長75歳まで運用可能です。この期間はNISA同様、運用益は非課税ですから、運用指図者として運用のみを継続するのも有効です。その場合は、公的年金をいつから受け取るのか、定年後は働くのかなども考え、全体として確定拠出年金の資金を60歳で受け取るべきかどうか検討すべきでしょう。

特に企業型確定拠出年金の場合、確定拠出年金の資金は定年時に一括で受け取ると、退職所得控除が使えるのでお得だ、というアナウンスがされることが多いようです。しかし実際には、確定拠出年金以外に退職一時金や確定給付企業年金(DB)があったりして、必ずしも一括受け取りが税制上有利とも言えないケースもあります。

また定年後の働き方によっては、改めて企業型DCに加入したり、iDeCoに加入したりする場合もあり、その際も60歳時点で確定拠出年金の資金を一括で受け取るのがいいのかどうか、判断が分かれます。

実際に手を動かしてみることが重要

配分変更、スイッチングという作業は、確定拠出年金独特のものです。実際、金融機関によって、その手順や名称が異なることがありますので、その場合はコールセンターなどに問い合わせをしてみて下さい。いずれにしても、まずは自分で手を動かしてやってみましょう。

例えばバランスファンドを選んでいる場合、スイッチングはファンドマネージャーが行っているので、ご自身で行う必要はありません。しかし、転職時の移換や老齢給付の受け取りの際など現金化が必要になるタイミングでは、やはりご自身で手続きを行う必要があります。

少し面倒な手続きだと思われがちですが、一度それぞれの作業の目的について、整理し理解することをお勧めします。

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