はじめに

受け取り方次第で税金で損する!退職金+iDeCoの受取り方

退職金の他に、じぶん年金としてiDeCoの積み立てを行っている人は、iDeCoの出口戦略をしっかり立てておく必要があります。

iDeCoは、退職金と違って受け取る年齢や受け取り方が選べます。そして、何も考えずに両方同時に受け取ると、受け取り時にかかる税金が多くなってしまうことがあります。

退職金もiDeCoも一時金で受け取る場合は、退職所得控除の対象です。しかし、勤続年数とiDeCoの加入期間が重複している場合は、長いほうの期間しか控除の計算に使えません。そうすると、退職金とiDeCoの一時金の合計額が多い場合は、退職所得控除からオーバーし、課税所得が出る可能性があります。

勤続30年、iDeCo加入期間20年で、退職金1500万円とiDeCoの一時金500万円を60歳で受け取る場合で確認してみましょう。

退職所得控除:800万円+70万円×10年=1500万円
退職所得:({1500万円+500万円}-1500万円)×1/2=250万円
所得税:250万円×10%-9.75万円=15.25万円
住民税:250万円×10%=25万円
支払う税金:15.25万円+25万円=40.25万円

勤続年数は30年なので1500万円まで非課税になりますが、iDeCoを同時にもらうと2000万円になるため、非課税枠からはみ出した額の2分の1に税金がかかってしまいます。退職金とiDeCoの一時金の合計が退職所得控除額を超過してしまう場合は、受け取り時期をずらす方法がおすすめです。

しかし、iDeCoを先に受け取るか、退職金を先に受け取るかで課税所得合算の対象になる年数が異なります。

●退職金を先に受け取り、iDeCoを後から受け取る場合
「前年から19年以内」に受け取った一時金が退職所得控除の合算の対象
→退職金受け取りから20年を空ければ、iDeCoの退職所得控除が使える

●iDeCoを先に受け取り、会社の退職金を後から受け取る場合
「前年から4年以内」に受け取った一時金が退職所得控除の合算の対象
→iDeCo受け取りから5年を空ければ、退職金の退職所得控除が使える

つまり、iDeCoを先に受け取り、5年以上空けてから退職金を受け取れば、それぞれの退職所得控除が使えるため、税金が安くできるというわけです。先ほどの例で確認してみましょう。

iDeCoの退職所得:500万円-800万円=-300万円
→課税所得0円なので税金ゼロ

退職金の退職所得:1500万円-1500万円=0円
→課税所得0円なので税金ゼロ

しかし、上記の方法は定年が60歳の場合だと不可能です。なぜならば、iDeCo は60歳以降にしか受け取れないという資金ロックが付いているからです。

その場合は、退職金を受け取った翌年以降にiDeCoの一時金を受け取り、少しでも課税所得を減らす工夫をしてみましょう。iDeCoでは退職所得控除が使えませんが、「2分の1課税」は適用されるため、退職所得は「一時金×1/2」となります。つまり、「1/2」のおかげで退職所得が減らせる場合があります。また、60歳から65歳までiDeCoに加入することで、毎年の所得控除の効果も得られます。

また、iDeCoを年金でもらうという手もあります。65歳以上であれば、毎年110万円以内なら課税されません。

「定年後ずっと使えるお金のルール」(宝島社)より

ただし、公的年金(国民年金・厚生年金)を同時にもらう人は、公的年金とiDeCoの年金の合算に対して公的年金等控除が適用されるため、合計額が年間110万円を超えると所得税・住民税がかかり、社会保険料も増える可能性があります。

自分にとって、どの受け取り方が得か、いろいろなパターンを考え、比較検討してみることをおすすめします。

筆者が監修した「定年後ずっと使えるお金のルール」(宝島社)ではいくつかのパターンをシミュレーションした例を載せていますのでぜひ参考にしてみてください。

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